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歴史博士

2013/4/2

歴史博士

植林50万本、住民運動促し景観整備も

猿沢池近くに立つ「植桜楓之碑」。聖謨自身が揮毫し、植樹への思いを記している

熱心に取り組んだ施策の一つが植林・植樹だった。奉行所付属の山が乱伐で荒れているのを見て植林に踏み切り、その数は50万本にも及んだとされる。また町の人々に呼びかけて、住民運動の形で古都の景観整備を推進。幅広く募金や寄付を募り、東大寺・興福寺を中心に数千本の桜やカエデを植樹した。佐保川沿いの桜もこの時、植えられたものだ。

その経緯を記した石碑「植桜楓之碑」が猿沢池近くに立つ。人々に求められて聖謨自らが揮毫(きごう)し、こう記している。「歳月の久しき、桜や楓(カエデ)や枯槁(ここう)の憂い無きあたわず。後人の若し能く之れを補えば、則ち今日の遊観の楽しき、以て百世を閲みして替えざるべし。此れ又余の後人に望むところなり」。桜やカエデはいつか枯れるが、後世の人々が植樹して補ってくれれば、いつまでも楽しめる。それが私の望みだ――と。

【アクセス】近鉄奈良駅から徒歩約20分

聖謨の思いを継ぎ、佐保川沿いの住民は桜を守り、育て続けている。川路桜がある地区では有志が「佐保川・川路桜保存会」を組織し、16年前から川の清掃や桜並木の手入れ、植樹などに取り組む。「メンバーも徐々に増え、現在は約30人。地元だけではなく遠くからも参加してくれ、和気あいあいとやっています。花を見に来る皆に喜んでもらうのが一番です」。代表世話人の田中正信さんはこう話し、川辺に昨年植えた桜の苗木を見守る。

文=編集委員 竹内義治、写真=尾城徹雄

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