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明治・大物財界人が築いた数寄の空間

旧藤田男爵邸の庭園(大阪市) 古きを歩けば特別編・庭を巡る(4)

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NIKKEI STYLE

大阪城の北側、大川との間に緑の一帯があるのをご存じだろうか。都島区網島町。高い壁が巡り、分断されているため地上からはわかりにくいが、上空を通過する航空機から眺めると、一続きの庭園のようにも見える。現在、大阪市公館、市が管理する公園、藤田美術館、太閤園に分かれているこの広大な一帯は、明治期の大阪経済界の大立者、藤田伝三郎男爵とその子息の邸宅として一体的に整備された区域だった。

全体の面積は甲子園球場1.4倍

全体の敷地面積は甲子園球場1.4倍にあたる5万3千平方メートル。元は寺院の所有地だったが、1893年(明治26年)ころから邸宅や庭園の建設整備が始まったという。全体の完成は1916年(大正5年)ころ。藤田男爵は完成を見届けることなく1912年に亡くなった。伝三郎、没後は長男平太郎が住んだ本邸跡が現在市管理の公園(旧藤田邸庭園)と藤田美術館、次男徳次郎の住んだ東邸跡が太閤園、三男彦三郎の住んだ西邸跡が大阪市公館になっている。

希代の美術品収集家、茶を好んだ数寄者として知られる藤田男爵は庭園づくりにもこだわった。本邸の庭は明治期の大阪を代表する庭師、梅園梅叟(ばいそう)が担当。平たんな地形に石組み、築山で起伏を設け、大川の水を引き込んで、池のほか滝や川の流れを人工的に作り出した。戦争で大半の建物が焼失、戦後は長く放置されていたが、2000年から庭園遺構の学術調査と整備計画が動き出した。できる限り昔の庭園の趣を復元する形で修復され、04年、新たに市民公園としてよみがえった。広さは1万6千平方メートル。

和風志向のなかに荒々しさ

藤田男爵は「すっきりとしゃれた」ものが好みだったとされるが、修復を担当したランテック計画事務所(大阪市)の大原悟代表は「茶に傾倒したように和風志向はたしかだが、京都の日本庭園などと比べ石組みなどに荒々しい豪壮さも感じられる」と語る。石組み部分は見上げるほど高く、渓谷のようだ。資料が残っていないが、大原さんは「大川との一体感を意識したのは間違いない」とみる。あちこちに滝や水の流れを設けていたらしい痕跡があったからだ。規模の大きさとともに「これが個人宅の庭園?」と驚かされる。

庭園が売り物の1つの太閤園には当時をうかがわせるものが残る。点在する石の構造物や水だ。築山式回遊庭園に石仏、塔、灯籠、優雅な庭石、大きな一枚石の橋などがあちこちにあり、見事に手入れされた植栽と共に、訪れる人を楽しませる。大きな石は小豆島や生駒山系から運ばせたという。1970年から園の整備を手掛ける加藤昭正さんは「池や水の流れには東邸が整備された当時の姿が残っている部分があります」と語る。ただ、樹木は年々成長するため、園全体の雰囲気は昔よりうっそうとした雰囲気になってきたという。

戦前の大阪を代表する豪華な御殿

太閤園で見逃せないのが、戦火を逃れた東邸の一部「淀川邸」だ。書院式和風建築の東邸は本邸、西邸とほぼ同じ構造とされ、戦争で焼失した他の屋敷を類推させる貴重な建物。「網島御殿」と総称された藤田男爵邸は天王寺茶臼山に建てられた住友本邸と並び、大阪を代表する豪壮な和風邸宅だった。淀川邸は庭園と一体となって昔の豪華な御殿の様子を今に伝えている。太閤園の全体敷地は約2万3千平方メートル。庭園部分が多くを占める。

本邸、東邸とは少し違う様相を見せるのが西邸を受け継いだ大阪市公館だ。市が戦中の1943年(昭和18年)に購入して市立実業会館として利用したが、建物は戦災により焼失。59年に日米市長・商工会議所会頭会議が大阪で開催されるのを機に、迎賓館として今の建物が建築された。大阪万博が開催された70年には西側に庭が拡張され、全体敷地面積は1万3700平方メートルに増えた。

「もう2度とつくれない」

他の庭園は和風だが、ここは前庭にも川べりの裏側にも芝生が大規模に植えられた和洋折衷だ。今も海外からの賓客の接遇などに使われる。海外からの賓客は現在、南港のWTCの迎賓館でもてなすが、「特にこの公館でのパーティーを望まれる総領事もいらっしゃるので、臨機応変に対応しています」と宮沢勝彦館長。現在、庭園整備は民間に委託しているが、京都と違い名庭の整備にたけた業者が大阪には少ないのが悩みという。「一般公開時、できるだけ多くの方に見事な庭園を見ていただきたい」と言う。

現在、管理主体で3つに分かれた旧藤田男爵一族邸の庭園群だが、関係者が口をそろえたのは、「もう2度とこんな庭園はつくれない」という感想だった。今年は男爵が亡くなって100年になる。大阪市公館は迎賓館としての機能を廃止し、新たな活用法を公募する方針になったが、この見事な庭園群を一体化できたら、すばらしい大阪を誇示できる名物になるかもしれないと夢想した。

(文=編集委員 堀田昇吾、写真=尾城徹雄)

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