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砂に埋もれたナゾの石堤 水軒堤防(和歌山市) 古きを歩けば(16)

2012/1/24

上部が移築された江戸期の防潮堤「水軒堤防」の石積み。海側は切石をすき間なく積み上げてある(和歌山市西浜)

 和歌山市に残る江戸期の防潮・防波堤「水軒堤防」は、全国で類例のない石積みの海岸堤防の遺跡だ。ただし誰がいつ築いたのか、築造の経緯については一切記録がなく、謎に包まれている。今では堤体は砂に埋もれているが、一部が道路工事に伴って移築展示されており、城の石垣の技術を応用したとされる精緻な石積みを見ることができる。

 ■切石に「布積み」工法採用

 和歌山市街を流れる紀ノ川の河口の南。埋め立てが進んだ海岸線からは少し離れて、雑木林がベルト状に南北に伸びている。木々の根元に盛り上がった砂山の中に、水軒堤防は眠っている。堤の全長は約1.7キロ。石積みが組まれているのは中央部の約1キロで、北と南の部分は砂丘を利用するなど土盛りの堤防だった。幕末ごろから次第に海砂に覆われて埋もれてしまい、そのおかげでほぼ全体が良好な状態で保存されている。1959年に和歌山県の史跡に指定された。


水軒堤防は紀ノ川河口の南岸約1キロにわたって築かれ、今もかつての海岸線沿いに伸びる林の下に眠っている(和歌山市西浜の章魚頭姿山から)

 初めて発掘されたのは2005~09年。砂中から現れたのは、切石を約4メートルもの高さに整然と積み上げた石堤だった。石積みの堤体(幅約12メートル)を築き、陸側に土盛り(幅10メートル以上)を添えて補強した上で、土盛りに風潮防備林としてマツが植えてあった。切石は直方体で、縦横が30~50センチなのに対して奥行きが70センチ前後もあるうえ、石の継ぎ目が水平に通るように積む「布積み」工法が採用されていた。こうした技法は城の石垣と共通するという。

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