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小碗に浮かぶ瑠璃色の宇宙

曜変天目茶碗(藤田美術館・大阪市) 古きを歩けば(43)

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NIKKEI STYLE

口径約12センチと小ぶりな黒茶碗(わん)をのぞくと、瑠璃(るり)色の斑紋が浮かんでいる。大阪市の藤田美術館所蔵の国宝・曜変天目茶碗は、薄い水色から紫がかった青までのグラデーションが天の川のようだ。

現存は日本の3碗のみ

斑紋は手で描いたのではない。「曜変」は元は「窯変」と表記され、窯で焼成する際の何らかの変化で斑紋が生じたものを指す。宋代に福建省でつくられたとされるが、妖しいまでの輝きを生む製法はいまだ謎だ。

現存するのは日本にある国宝の3碗のみとされる。「天下三碗」と称され、同館のほか東京の静嘉堂文庫美術館と京都の大徳寺龍光院に伝わる(龍光院のものは京都国立博物館に寄託中)。ミステリアスな輝きのためか、うち2つは大名家でも珍重された。静嘉堂文庫美術館の品は徳川家光が乳母の春日局に与え、その嫁ぎ先の稲葉家に伝わったものを三菱財閥の岩崎家が買い取った。藤田美術館の品は徳川家康が水戸徳川家に与え、その伝来品を大正期に藤田財閥の藤田家が購入した。

スポットライトで浮かび上がる輝き

曜変天目は、宋や元の茶器や絵画への評価をまとめた室町期の「君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)」でも評価が高い。藤田清学芸員は「『世上になき物也』などと最上級の賛辞が連ねられている」と説明。藤田美術館の曜変天目は「大正期に5万3800円で買ったとされ、現代の貨幣価値に換算すれば4億円とも5億円ともいわれる」という。

貴人への献茶など、ごく限られた機会にしか実用には供されなかったとみられるが、内側には茶せんによる細かい擦り傷がある。藤田家の茶会などの記録は空襲で焼けてしまっており、同学芸員は「徳川家が使った名残か、藤田家に来てからのものかわからない」と苦笑する。

斑紋は光の加減で見え方が相当異なる。同館では昔は、斑紋が見えづらい蛍光灯の光のみで展示し、淡い輝きに気づかずに通り過ぎた人もいたという。現在は発光ダイオード(LED)のスポットライトを加え、斑紋が淡く浮かび上がるようになった。展示期間中の土曜日には午前11時と午後2時の作品解説の際、LED懐中電灯の光も加えて、よりくっきり見えるようにしている。

外側にも小さな星形の斑紋

同館の品は、碗の外側にも小さな星のような斑紋があることが特徴の1つだ。

大阪市立東洋陶磁美術館(同市北区)の出川哲朗館長は「素地の土も最高のもの。土の削り方や形など、つくりの丁寧さからみても曜変天目を狙ってつくった」とみる。同時に斑紋は「偶然の産物ではないか」とも指摘する。狙いすましても、ごくまれにしか生じない輝きというわけだ。長年中国でも曜変天目の陶片は見つからなかったが、「今年になり、極めて鮮やかな斑紋が残る陶片が発見されたとの発表があり、話題を呼んだ」(同館長)という。その分析から、製法にどこまで迫れるかが注目される。

「独特の斑紋は2万~3万個のうち数個」と現代の陶工

その輝きを自らの手で生み出そうと今なお、研さんを重ねる人は少なくない。京都府宇治市の陶工、桶谷寧さんも20代から曜変天目をつくり続けて20年になるという。静嘉堂文庫美術館と藤田美術館の2碗は大学時代に初めて見た。「いずれも素晴らしい」と語る半面、「印象を語るのは難しい」とも話す。桶谷さんにとっては、自らつくった碗と見比べ、その違いを探る対象でもあるからだ。


自身の挑戦では「年間2万~3万個を焼き、独特の斑紋が出るのは数個」で、状態の良い物はさらに少ない。「宋代には極めてシンプルな方法でつくっていたはず」との考えに基づいて試行錯誤を重ねる中で近年、「数秒の間に数百度の温度変化が必要」との感触を得たという。焼成中に煙突下部から窯の中に水を入れることで「急激な温度低下や気圧の変化などをもたらすと、斑紋の発生と定着が起こる」と桶谷さんはにらむ。それでも「まだ制御しきれない」と語る桶谷さんの目標は「本物を超えること」だ。

藤田美術館は春と秋の年2回、所蔵品の一般公開を行っているが、曜変天目の展示は2、3年に1度。今年は12月9日まで展示する。東洋陶磁美術館も同月25日まで国宝「油滴天目茶碗」を展示中。趣の異なる天目の至宝を味わえる格好の機会といえそうだ。

(文=中川竜、写真=尾城徹雄)


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