2012/11/20

歴史博士

スポットライトで浮かび上がる輝き

蛍光灯のみの照明だと別の茶碗に見えるぐらい発色が異なる

曜変天目は、宋や元の茶器や絵画への評価をまとめた室町期の「君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)」でも評価が高い。藤田清学芸員は「『世上になき物也』などと最上級の賛辞が連ねられている」と説明。藤田美術館の曜変天目は「大正期に5万3800円で買ったとされ、現代の貨幣価値に換算すれば4億円とも5億円ともいわれる」という。

貴人への献茶など、ごく限られた機会にしか実用には供されなかったとみられるが、内側には茶せんによる細かい擦り傷がある。藤田家の茶会などの記録は空襲で焼けてしまっており、同学芸員は「徳川家が使った名残か、藤田家に来てからのものかわからない」と苦笑する。

斑紋は光の加減で見え方が相当異なる。同館では昔は、斑紋が見えづらい蛍光灯の光のみで展示し、淡い輝きに気づかずに通り過ぎた人もいたという。現在は発光ダイオード(LED)のスポットライトを加え、斑紋が淡く浮かび上がるようになった。展示期間中の土曜日には午前11時と午後2時の作品解説の際、LED懐中電灯の光も加えて、よりくっきり見えるようにしている。

外側にも小さな星形の斑紋

側面にも星のような青い点が浮き上がる

同館の品は、碗の外側にも小さな星のような斑紋があることが特徴の1つだ。

大阪市立東洋陶磁美術館(同市北区)の出川哲朗館長は「素地の土も最高のもの。土の削り方や形など、つくりの丁寧さからみても曜変天目を狙ってつくった」とみる。同時に斑紋は「偶然の産物ではないか」とも指摘する。狙いすましても、ごくまれにしか生じない輝きというわけだ。長年中国でも曜変天目の陶片は見つからなかったが、「今年になり、極めて鮮やかな斑紋が残る陶片が発見されたとの発表があり、話題を呼んだ」(同館長)という。その分析から、製法にどこまで迫れるかが注目される。