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線刻画が指し示す?古代船の旅路の果て

高井田横穴群(大阪府柏原市) 古きを歩けば(42)

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NIKKEI STYLE

正装し、手に旗ざおを持った人物がゴンドラ状の船の上にたたずむ。傍らには見送るかのように、大きく両手を振る女性の姿。高井田横穴群(大阪府柏原市、6世紀~7世紀)の第3支群5号墳に描かれた人物群像は何を物語っているのだろうか。

162基の横穴墓を確認

同横穴群は古代、奈良盆地と大阪湾を結ぶ交通路だった大和川のほとりの丘陵中腹にある。大正時代に発見され、これまでに計162基の横穴墓を確認。うち27基で線刻画が見つかっている。「渡来系氏族の墓」との見方や、九州の類例を元に「九州から来た石工集団の墓」とする説などがあるという。近畿で唯一、国史跡に指定された装飾古墳だ。

遺跡は20年前に公園として整備され、横穴は入り口に鉄柵が設けてあり普段は立ち入れない。ただしゴンドラ船に乗る人物像が描かれた第3支群5号墳は3年前、ガラスをはめ込んだ扉を取り付けて内部照明や音声案内装置も設置。いつでも壁画をのぞきこめるようになった。

同墳を月1回、定期点検する同市教育委員会の嘱託で元文化財課長の北野重さんに同行させてもらった。ガラス扉の鍵を開けて壁面の状況を丁寧に確認する北野さんの後に続く。羨道の高さは1.4メートルほど。ひやりと湿った空気を感じつつ頭をかがめて中に入ると、羨道の両側壁に力強い線刻画があった。

右側壁に8体、左側5体

横穴奥から向かって右側の壁に人物像が8体、左側壁には5体。左側壁は表面が半分ほど剥落している。ゴンドラ船に乗る人物像はどちらの側壁にもあるが、巧みなタッチで目を引くのは右側壁のものだ。丈の長い上着に幅広の帯を締め、ズボン状のはかまを身につけた当時の正装の人物が船に乗り、旗ざおを掲げている。船上には櫂(かい)や舵(かじ)を持った人物も見える。傍らに描いてあるのは、「裳(も=スカート)」姿で大きく両腕を振る女性だ。

壁画は何を意味しているのか。「霊魂を乗せた船が冥界へ旅立つ場面。死者が無事にあの世に旅立つことを祈った」「被葬者の生前の行為や功績を描き記した」などの説がでている。北野さんは「大和川流域では船をかたどった埴輪(はにわ)が多数出土します。壁画も埴輪も、古代の河川交通の様子がモチーフでは」と考える。

墓室には木棺に使われた鉄くぎが残っており、1つの横穴墓に3体前後の遺体を葬ったとみられる。入り口には木製扉などが付いていた模様だが、時代と共に朽ち果て、土に埋もれるまでの間に自由に出入りできた期間もあったようだ。大半は盗掘にあっているが、刀や馬具などの副葬品が見つかった例もある。

漢字や遠近法を用いた絵も

壁画を眺めると、一部は線刻が浅いなど明らかにタッチが違う。他の横穴には漢字を刻んだり、古墳時代には無かったとされる遠近法を用いたりした絵もある。同市立歴史資料館の安村俊史館長は「後世に描き加えた絵でしょう」とにらむ。ここの凝灰岩は表面が風化しやすく、新たに線を刻んでも数十年たつと古いものとの区別がつかなくなる。このため描き加えたのが古墳時代の追葬時なのか、後の時代の"落書き"か、判断が難しい。「絵の年代は内容や表現方法で判断するしかありません」と安村館長。描かれた服装や手に持つ道具などを元に、確実に古墳時代の絵と言えるのは4、5基という。

線刻や彩色、彫刻で幾何学紋様や絵画などを描いた装飾古墳は全国で約600基が知られ、うち56遺跡72基が国史跡に指定されている。このうち千足古墳(岡山市)では昨年、劣化のため彫刻を施した石材を石室から取り外さざるをえなくなったほか、清戸迫横穴(福島県双葉町)は東京電力福島第1原発事故の警戒区域に含まれて管理が難しくなるなど、保存体制を巡る問題が各地で相次ぐ。文化庁はこのほど保存科学の専門家らによるワーキンググループを設置。来年度末をメドに保存活用の指針をまとめる方針だ。

高井田横穴群では、第3支群5号墳は今のところ環境が安定し、カビやコケも特に問題ないという。ただ、横穴群の保存に長年携わってきた北野さんによると凝灰岩が劣化して粘土化が進んでいるほか、樹木の根が岩のひび割れに入り込み、隙間を広げる現象も深刻だ。北野さんは「他の横穴墓の保存体制も今後の課題です。これが正解、という保存方法はまだ見あたりません」と強調し、保存に向けて長期的な取り組みを訴える。

(文=編集委員 竹内義治、写真=伊藤航)

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