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歴史博士

輝き戻った究極の甲冑、伝統工芸が結集春日大社・赤糸威大鎧(奈良市) 古きを歩けば(22)

2012/3/20

歴史博士

あかね色を背景に、金色の雀(すずめ)が躍り、虎が哮(たけ)る。精緻な金工と、鮮やかな色彩のコントラストから「日本一豪華」と称される国宝「赤糸威(おどし)大鎧(よろい)(竹虎雀飾)」が初の本格修理を終え、奈良市の春日大社宝物殿で公開されている。甲冑(かっちゅう)は伝統工芸の集大成だと改めて感じさせる逸品だ。

1年がかりの修理作業を終え、春日大社宝物殿で公開されている国宝「赤糸威大鎧(竹虎雀飾)」(奈良市)

 ■兜の正面に隙間無く金物細工

兜の正面や大袖は、鋭い目つきの雀や哮る虎、竹や桐、菊など精緻な金物細工でびっしり飾られている

鎧は高さ約135センチ。兜(かぶと)の正面に隙間無く飾られた金色の金物細工が目を引く。モチーフの中心となっている雀は計96羽おり、いずれも鷹(たか)のように鋭い目つき。顔の両側に位置する「吹返(ふきかえし)」には、向かって右側に藤と桐(きり)が、左側に菊と蔦(つた)があしらわれ、それぞれ春と秋を表現しているとされる。

甲冑の一大産地だった奈良で、鎌倉時代後期~南北朝時代に作られたとみられる。奉納用として華麗な装飾が施されているが、実際に着用できるという。目の当たりにすると、当時の人々の小柄さが分かる。

いつ誰が奉納したのか、由来に関する記録や伝承は同大社には残っていない。「源義経が納めた」との伝承が一般には知られているが、推定製作年代が明らかに違う。「武器・武具研究が盛んになった江戸時代に、そう言われ始めたようです」と宝物殿の松村和歌子・主任学芸員が教えてくれた。

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