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甍の波間に浮かぶタマネギ

古きを歩けば(52) 生神女福音大聖堂(京都市)

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NIKKEI STYLE

京都御所の南、閑静な住宅地に広がる甍(いらか)のはざまに、タマネギ形のドーム屋根を載せた塔がたたずんでいる。この京都ハリストス正教会・生神女(しょうしんじょ)福音大聖堂は1901年(明治34年)の建造。現存する正教会の木造聖堂のうち、ビザンチン様式の本格的なものとしては国内最古という。

大小30のイコンで埋められた「聖障」

正教会ではキリストをギリシャ語読みしてハリストス、聖母マリアを生神女と呼ぶ。長司祭の及川信さんに聖堂内を案内してもらった。玄関を入ると、順に礼拝や儀式の間「啓蒙所」「聖所」、聖職者らのみが立ち入れる間「至聖所」の3部屋が一列に並んでいる。ステンドグラスから色鮮やかな光が差し込む。「窓のガラスや扉なども含め、建物のほとんどが建築当時のままです」。及川さんはこう話す。

聖所と至聖所を隔てる壁、聖障(せいしょう、イコノスタス)は大小30のイコン(聖像画)で埋め尽くされている。描かれているのは「最後の晩餐(ばんさん)」「生神女福音(受胎告知)」といった聖書の一場面や、聖ニコライをはじめとする聖人、天使らだ。聖障の前に立つ「凱旋旗」や天井からつり下がっているシャンデリア、室内の燭台(しょくだい)など、見事な細工を施した様々な聖器物も堂内を飾る。「聖障をはじめ、多くが建設時にロシアで制作され、日本にもたらされたものです」と及川さんが説明してくれた。

本場ビザンチン様式、メリハリ付け簡略化

イコンは、祈りをささげる人々が天国を体験するための「天国と地上の間の窓」とされ、修道院などで学んだ専門の画家によって厳密な決まりごとに従って描かれる。聖堂内のあちこちに掛けられているイコンをみていると、うち2枚に「京都市伏見俘虜(ふりょ)収容所在留正教俘虜者一同ヨリ」「第二太平洋艦隊俘虜一同ヨリ」などと記した銘板が付けられているのに気付いた。日露戦争時、この聖堂まで祈祷(きとう)に通った帝政ロシア軍の捕虜らが帰国の際、献納していったものだという。

「大きさの違う四角い部屋(玄関、啓蒙所、聖所、至聖所)を縦に並べ、特徴的なタマネギ形のドームを載せている、正教会の聖堂の典型的な型式です」。京都工芸繊維大の石田潤一郎教授(近代建築史)が教えてくれた。

京都の聖堂を設計したのは当時、京都府技師だった建築家、松室重光(1873~1937年)。「手本は1891年に建てられたニコライ堂(東京復活大聖堂、東京・千代田、国重要文化財)くらいしかなかったはずですが、本場のビザンチン様式のポイントをきちんと押さえつつ、メリハリを付けて簡略化してあります。京都の雰囲気に似合った爽やかな聖堂です」。石田教授は高く評価する。この聖堂が、愛知県豊橋市の聖使徒福音記者マトフェイ聖堂(国重要文化財)などその後に日本各地に建てられた正教会の木造聖堂の範例になったとされる。

国重文級、1世紀前の姿保つ

松室は東京帝国大で建築を学んだ後、京都府技師として大徳寺唐門や平等院鳳凰堂など古社寺の修復に携わる一方、多くの建物を設計した。京都市内には彼の手による京都府庁旧本館と旧武徳殿が残り、共に国重要文化財に指定されている。

その後、部下の汚職事件の責任を取って京都府を辞し、旧満州(現中国東北部)に活動の場を移す。中国・大連市には、彼の作品である旧大連市役所(現中国工商銀行大連市分行)や旧関東逓信局(現大連市郵政局)が、今も現役で使われているという。

「大学の同期である武田五一や片岡安に比べると知る人ぞ知る、といった存在ですが、もっと再評価されるべき建築家です」と石田教授は指摘する。

京都市文化財保護課の清水一徳さんは「木造の洋館建築は構造上、雨水が主要構造に回りやすく保存が難しいのですが、この聖堂はこまめに手入れされている上に改変箇所が無く、保存状態が極めて良好です。現在は京都市指定有形文化財ですが、国重要文化財級の貴重な建物です」とその文化財的価値を強調する。

現在、教会に集う信者は計約200人。毎週土曜、日曜に行われる祈祷には30~40人が参列するという。九州から昨春、赴任してきた及川さんは「ロシアだけでなくセルビア、オーストラリアなど、実に多くの国の人たちが聖堂を訪れるのに驚きました。さすが京都ですね」とほほ笑んだ。

(文=編集委員 竹内義治、写真=沢井慎也)

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