2800兆円の担い手 進む自立、消費を主導Wの未来 世界を動かす(3)

2013/5/11

旺盛な内需をテコに経済成長を続けるフィリピン。最大手のフィリピン・アイランズ銀行で働くテレサ・ハビエル(42)は顧客預かり資産7500億ペソ(約1兆8000億円)の運用総責任者という要職にある。

管理職の52%

同僚と話すテレサ・ハビエールさん(4月、マニラ首都圏)

政府系機関で働き始め、銀行に転職。猛スピードで昇進を重ね38歳で経営陣入りした。「我が国には女性の能力を正しく評価する文化がある」と語る。

その言葉を国際労働機関(ILO)の2011年の統計が裏付ける。フィリピンは管理職の女性比率が日米欧、アジアなど主要22カ国・地域で最高の52%。国内総生産(GDP)の1割相当を送金する出稼ぎ労働者は、12年に出国した55%が女性(海外雇用管理局調べ)。国内の知的労働も、医師やIT(情報技術)技術者からメイドまで幅広い職種で外貨を稼ぐのも、主導するのは女性たちだ。

大量生産型の工業社会から脱皮し、情報・サービス産業の比重が高まると、体力に頼る男性の仕事は減り、コミュニケーション能力に優れた女性の活躍の場が広がる。米国では景気後退の始まった07年から5年間で男性の雇用が3.4%減った一方で、女性は1.3%減にとどまった。

サムスンで実績

日本以上の男性中心社会ともいわれる韓国。先頭を独走する最大財閥は意外にも早くから女性の可能性に着目していた。

「我々の社会が無駄にしているものは何か。かくも優秀な女性の力を使えていないという点だ」。スマートフォンや半導体で世界トップに上り詰めたサムスン電子。社風を劇的に変えるきっかけとなったのが、会長の李健熙(71)が20年前に出した新経営宣言だ。品質やデザインへのこだわりに加え、女性活用の重要性にも言及した。

その年から当時としては異例の大卒女性の公募採用に踏み切った。高い英語力が問われ、入社倍率が百倍超の難関企業だが、現在、国内の社員約9万人に占める女性は30%弱。この数字はパナソニック(約16%)や、サムスンの出資を受け入れたシャープ(約10%)など収益低迷が続く日本勢を上回る。2人の女性副社長が誕生し、将来のトップ予備軍の層も厚い。

経済を動かし始めた女性たちは消費も握る。

ベトナム北部の農村地帯。10年前、マイクロファイナンス(少額無担保融資)で調達した資金で養豚や果樹栽培に乗り出した女性グエン・チ・タム(40)は年収が日本円換算で3万円余から70万円に増えた。「近隣の女性たちを雇えるまでになった」。自宅にはテレビなど家電製品が並ぶ。労働で得た金は自分や家族のための消費に回り、その積み重ねが内需を刺激する。

ボストン・コンサルティングの調べでは、世界消費の6割強で女性が決定権を握り、数年後に2800兆円規模に上る。

その先にどのような社会があるのだろう。米ジャーナリストのハンナ・ロージンが著書「The End of Men(男性の終わり)」に描く。経済的に自立したシングルマザーの増加、夫婦間で臨機応変に役割を入れ替える「シーソー婚」の浸透、中流層の「女家長制」への移行――。社会のあり方を大きく変える女性の飛躍に「昔の社会に戻るという選択肢はもうない」と言い切る。=敬称略