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女性活躍が社会に活力 吉村山形県知事インタビュー

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NIKKEI STYLE

現在3人いる女性知事のひとりで、今年1月に再選を果たした吉村美栄子・山形県知事に、女性リーダーのあり方や女性の社会参加などについて聞いた。

――無投票で再選しましたが、支持の理由をどう見ますか。

「県民との対話を重視して、全力で実行してきた点が評価されたのでは。山形県の農業生産額や雇用指標、高速道路の整備率などは改善し、東日本大震災後の対応も支持されたと思います」

――女性であることは選挙で有利に働きましたか。

「イメージとしてあるかもしれませんが、すべてではありません。男女それぞれで性格は様々。性別は意識せず、人間として県政をしています。ただ、出産・育児の経験があり、結婚や育児支援にも力を入れています。その辺りでは、にじみ出た部分があるのかもしれません」

――日本はまだ女性が思う存分働ける社会になっていないのでは。

「女性が暮らしやすい社会は、男性にも暮らしやすい社会です。性別に関係なく、なりたいものになれる社会が望ましい。実現のために我々も努力しないといけません」

「政治をはじめ女性の社会参加が少なく、改善すべきです。歴史的に日本は男性がリーダーであることが当たり前で、女性は家事や育児という固定観念がありました。ただ、戦後は男女平等が進み、例えば学校の家庭科の授業は男女が一緒になりました。意識変化には教育が大事で、漢方薬のように緩やかに効果が表れます」

「一方で即効性のある対策も必要。先の衆院選後も女性議員は少なく、先進国では最低水準です。世襲制や資金調達が壁となり、女性は政治に進出しにくい。しかし政治は日常生活にすぐ影響するので、状況が変わるまでのんびりと待てません。政府が議員の女性比率を一定以上になるよう義務づけるなど、対策を打つ必要があります」

――産業界でも女性の活躍が期待されます。

「女性の視点を取り入れると、まったく新しい製品が生まれたりする。女性の力を経済に生かす『ウーマノミクス』を企業は積極的に導入すべきです。人口が減るなかで、女性や高齢者が今以上に働きやすくなれば、社会に活力をもたらします。今のうちに対策を打たないと日本社会はいずれ危機的な状況を迎えてしまうでしょう」

「出産して復帰した女性は、子供の発熱などで仕事を休まざるを得ないケースが多く、職場でのケアが大切です。特に経営者の意識を国策として変えなければなりません。女性支援を明確に打ち出して、社員のワークライフバランスの充実に取り組むことが大切になります」

――公約で掲げた県の合計特殊出生率1.7は高いですね。

「それを目指さないと活力を失います。山形県は全国5位の高齢県。出生率を高めるのが必要です。震災で人との絆の大切さが再認識されました。家族とつらさや寂しさも分かち合えるのは幸せなこと。私も知事になって何度も落ち込みましたが、子供に励まされました。県職員にも言っていますが、家族を持つことは大事です」

――家庭の事情から民間企業を退社し、専業主婦を長く経験しました。

「専業主婦の頃も社会で何が起きているか常に関心があり、子育てしながら行政書士の資格を取得しました。知事の今でも主婦感覚は抜けないけれども、それが強みでもあると思います。主婦の井戸端会議のように、どんな立場の人とも話し合えます」

「自分が消費者に近い人間だなと思ったのが、震災後、山形県産牛肉の出荷前の全頭検査を全国でいち早く決めた時です。台所を預かる主婦の意見をたくさん聞きました。主婦にとってはスーパーにある目の前の牛肉が本当に安全かどうかが大事なのです」

――右肩上がりの経済成長が終わり、これから女性リーダーが増える可能性があるのでは。

「まだまだ企業などでは従来型の経済成長を望むところも多く、その意味では強力なリーダーシップも求められています。ただ、いずれ心の豊かさや文化的価値が求められるようになるでしょう。今はその過渡期と言え、女性が社会で活躍できるようにしておかないといけません」

――サッチャー元英首相が死去しましたが、理想の女性リーダー像は。

「サッチャー氏が登場した頃、『女性でも首相になれるようになったんだな』と思いました。鉄の女は見るからに頼もしく、性別に関係なくリーダーになれる人だと感じました。私は知事としての責任があり、現場に足を運んで県民と対話します。『女性だから』ではなく、私が活躍する姿を若い人や子供が見て、可能性を感じてほしい。それが私の役割だと思っています」

(聞き手は山本優)

 吉村美栄子氏(よしむら・みえこ) 1974年お茶の水女子大卒、リクルート入社。退社後、子育てしながら81年に行政書士の資格を取得。山形県教育委員会委員や同県総合政策審議会委員などを経て、09年の知事選で初当選。山形県出身。61歳。

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