女性辞めさせない努力を 新浪剛史・ローソン社長
経済成長のために働く女性を増やす必要性があると積極的に発言しているローソンの新浪剛史社長に、その理由や実現への方策などを聞いた。
――女性が働きやすい環境作りの必要性を提唱しています。
「マクロ経済でいえば、(少子高齢化による)人口減少が続くので、まだ未開拓の若い人、つまり女性が働くことによって経済成長が生まれます。今後、1人当たりの給与が飛躍的に上昇することは考えにくく、シングルインカムでは経済はうまく回らない。それよりダブルインカムになることで、消費が増え、子どもももうけやすくなります」
「企業成長の面でも女性は必要です。生活密着型企業の商品は、女性に受け入れられないと売れません。社内に女性がいなければマーケティングができず、女性に参画してもらう方が企業の成長性も上がります」
――企業はどのような対策を取るべきでしょうか。
「会社内での女性の人口を増やします。新入社員の女性の比率を上げ、どうやったら辞めないで働き続けられるかを考えます。そのために払うコストよりも、女性が働くことで得られるリターンの方が高いのです」
「子どもがいる女性は午前10時に出社して午後4時に帰宅するのでもいいでしょう。男性にできないことはたくさんあります。たとえば『どうやったらスーパーではなくローソンに来てもらえるか』。我々男性は机上の空論をしがちですが、必要なのはプロの主婦の目線。それが多様性の強みです」
「ローソンは育児休業が3年とれます。ただ、復帰がスムーズになるよう工夫はしています。育休中、女性は毎日スーパーに行くでしょうから、レポートを書いてもらい、コミュニケーションを続けます。復職後は半年から1年、女性のみの部署に所属してもらい、意見を商品開発に生かしてもらいます」
――20代女性で専業主婦志向が強まっているという調査結果もあります。皆が働きたい訳でもないようです。
「全員が同じ方向を向かねばならない訳ではありません。上昇志向を持っている女性がいて、そうでない女性がいてもいいのです。たとえば1日5時間でいいから働きたい、そういう価値観を認めれば、働き続けたい、という女性も増えるのでは」
「会社は今まで(すべての従業員が)上昇志向を持ち切磋琢磨してほしい、とやってきました。しかし『ずっとこの地位にいたい』という人も認めなければなりません」
――男性からアファーマティブアクション(少数派に配慮する差別是正措置)と言われませんか。
「アファーマティブアクションは取るべきです。必ず企業に利益として戻ってきます。多様性は企業体質を強くする、見えざる資産です」
「男性からすれば『なぜ女性ばかり』となりますが、経営から見たら当たり前です。女性の活用が企業にプラスになり、男性の収入にも跳ね返ってくることを、トップが説明しなければなりません」
「ただ、ローソンの場合、結婚や出産にいたる前、女性にも現場経験をしてもらいます。同じ釜の飯を食ったという共有感は大切。苦しい部署を経験し、自分たちの住んでいる世界は何か、を体感することは必要です」
(聞き手は松本史)
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