意欲ある女性の活躍、支援しつつリターン求める
大八木成男・帝人社長
Wの未来 会社が変わる
女性の管理職への登用を進めるなど、素材業界では先駆的な取り組みを続けてきた帝人の大八木成男社長に聞いた。
――女性の活躍を支援するための環境づくりに熱心です。
「2000年に『女性活躍推進室』をつくり、様々な施策に取り組んできました。総合職の新卒採用の女性比率は30%以上を保っており、女性管理職も増やしました。育成プログラムの充実や短時間勤務の期間延長、在宅勤務などを取り入れ、男女問わずに多様な働き方ができるようにしています」
「優秀な人材は性別や年齢にかかわらず活躍できるものです。グローバル企業を目指すには女性を含めた人材の多様化が不可欠。投資家向け広報(IR)で海外に行くと、海外の投資会社などで働く日本人女性を見かけます。優秀な能力の海外流出が進んだのではないかと懸念しています。日本では出産や結婚で会社を辞める女性が多いですが、意欲がある人に働きやすい場を提供したいのです」
「帝人は売上高の約4割が海外向けで、海外の現地法人で全体の半分弱にあたる約7000人が働いています。男性中心の体制では一層のグローバル化は難しいです。人事戦略も『日本ではこうだから』では海外に通用しません。人材の多様化は競争を勝ち抜くための手段。イノベーションの源泉です」
――人事制度などを新たに整備するには一定のコストがかかります。
「コストだという意識はありません。制度をつくることは福利厚生が目的でもありません。企業として本来備えているべきものを取り戻すということです。男性に比べ、女性は結婚や出産などの様々な局面を人生で迎えます。それらを乗り越えるために支援できる体制を整えていくのです。ただ、投資するからにはリターンは厳しく求めます。社員は努めて能力を高めねばならず、会社に貢献すべきです」
――帝人グループは女性社員が全体の約2割まで増えましたが、どんな変化がありましたか。
「総合職として入社する女性が増えるなどで、職場の雰囲気が変わってきました。育児中の女性社員は短時間で効率的に仕事をする努力をしています。男性社員は女性の働く姿を見て、より生産性を高めようとする仕事への姿勢や、服装、言葉遣いなど様々な面で影響を受けます。チームで情報の共有を進め、お互いに助け合おうとする雰囲気が醸成されました」
「男女の傾向を比べると、女性は物事の割り切り方が明快で自分の意見をはっきり言いますが、男性は上司の指示に素直に従いがちです。女性はキャリアを開発していくのに強い意志を持ち、仕事も緻密です。例えば新製品の開発では科学的な裏づけを欠かさず、特許管理など専門性が高い分野で力を発揮します」
――将来は女性社員をどこまで増やすつもりですか。
「労働力人口の男女比を前提とすれば、女性社員比率は3割くらいに落ちつくのではないでしょうか。ただ、それは簡単なことではなく、積み重ねが大切です。例えば経営トップが女性になれば、もっと女性社員は増えるのかもしれません。これまでも女性が意欲を持って能力を発揮できるように支援してきましたが、まだまだ取り組みは進化させていくつもりです」
(聞き手は山本優)
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