私も「サロネーゼ」 主婦力が拓く新市場Wの未来

2013/10/7

予約しても8年待ちという人気講座が相模原市のマンションの一室で開かれている。「ミセス美香」こと中村美香(39)が自宅で開く、優雅な住まいにするための装飾・収納術の教室(サロン)。人気の秘密は「普通の生活空間で美しい暮らしを実現するので、私にも手が届きそう」(生徒の一人)なところだ。

収納や料理伝授

「サロネーゼ」。中村のように自宅を開放し、少人数制で料理などを教える主婦をこう呼ぶ。問われるのはセンス。中村は白とベージュでまとめた2LDKの部屋の隅々まで見せて収納法を伝授。暖炉調の家具にテレビを収め、リモコンは美しい箱に。手作りや低価格の雑貨をうまく使う。

中村もかつて「おもてなし」など10近いサロンに通った。家のインテリアに凝り飾ることが好きで、2009年に教室を始め昨年、本の出版でブレイクした。

教室は1回4時間、年10回で5万円。年40人が受講する。収入は「主婦パートと同程度」。「好き」を仕事にできたことが支えだ。

家庭発のノウハウを仕事に発展させる主婦の増加に企業も関心を寄せる。クリナップはサロネーゼ交流サイトを開設。会員1200人が情報交換する一方、外部企業の商品開発にもつなげる。

料理番組の収録に臨む山本ゆりさん(東京都港区南青山)

こうした主婦をスターに押し上げるブログからの道筋も確立されてきた。

書店にずらりと並ぶ、料理ブログのレシピ本。中でも大阪市の主婦、山本ゆり(27)は3冊で累計200万部を突破したシンデレラストーリーの体現者だ。

ブログでスター

山本のブログは手軽さが売り。電子レンジにかけるだけのカレー。ケチャップとめんつゆで作るオムライス丼。器は100円ショップで買う主婦目線と、関西弁のノリの良さで人気が出て編集者の目に留まる。

「専門的に学んでいない分、料理が大胆で実用的」と発掘した宝島社の伊藤香織(35)。同社の宣伝でブログのランキングはさらに上がり、今や1日25万アクセスをたたき出す。テレビにも出演する多忙な日々に山本本人はまだ慣れず、「カリスマ主婦といわれるのは本当に嫌で」と苦笑する。

主婦で写真家の「きょん♪」こと川野恭子は、子供のポートレートの撮り方指南で母親の心をつかんだ。

趣味のカメラはもともと風景撮影が中心。子育てに専念しようと会社を辞め、自宅でできる副業をと、機械が苦手な女性向けに撮影技法のイロハを解説するブログを08年に始めた。柔らかな雰囲気の写真に、講師や出版の話が来るうち、親の立場ならではの我が子の撮り方を編み出した。

母親に人気のカメラ教室は横浜のアトリエ以外にも広がり、収入が会社勤めだった時を超えたほど。「写真を楽しむ女性の身近な存在で居続けたい」と話す。

料理や手芸にとどまらずライフスタイルや暮らしを彩る提案まで、家庭にこそ宝の山がある。主婦力を生かして社会に羽ばたく女性たち。その潜在力に共感し支持する主婦らもまた、同じように羽ばたく可能性を秘めている。そこに新たな市場が広がる。(敬称略)