「自分磨き」やっぱり外見も ビジネスの武器に
Wの未来 キレイになる
「取引先へのプレゼンで意欲が伝わるメークをしたい」。資生堂が東京・銀座で手掛ける化粧の個人レッスン。働く女性がこんな思いで訪れる。「アイシャドーをこう入れるとシャープさが際立ちます」。個室で2時間の個別指導を受け料金は2万円ながら、週末は予約ですぐ埋まる。
化粧もビジネスの武器にする――。英国の社会学者キャサリン・ハキムは2011年の著書「エロティック・キャピタル」で、そんな考え方を肯定した。「美しさは資格や職歴と同様に人を成功に導く重要な資産の一つ」。女性はもっと外面も磨くべきだと説く。
■ミスコン活況
大学ではミスキャンパス選びが再び盛り上がる。関西で13の大学からそれぞれのミスを集め、ナンバーワンを決めるコンテストが今年初めに開かれた。今回で3回目の大会だ。各大学のミスが有名企業に相次ぎ就職したとの評判が刺激となり、大学のミスコンの応募者は年々増えている。
かつて女性蔑視と批判されたミスコンでも、女子学生はチャンスをつかむツールだと割り切る。参加する学生は「ミスの経験は就職にも有利」と屈託ない。
「見た目の美しさを2割増し」。こうPRするセルフィット大阪梅田スタジオ(大阪市)も就活中の女子学生に人気だ。シーズンには写真撮影の予約が殺到し3週間待ちにもなる。服装や表情、姿勢などを入念にチェック。デジタル処理でニキビや小じわを消す。
スタジオに来た大阪教育大4年の市来紗弥(21)は公務員希望だ。写真は受験票に貼る。「選考は実力勝負だと分かっていても、少しでも良い印象をアピールしたい」と、1万1千円のコースを選んだ。
働く女性向けにパソナが13年暮れに開講した研修講座。簿記や英語といった講座と並び、元ミスインターナショナル日本代表の金ケ江悦子(28)が講師を務めるコースの人気が高い。美しく見せる立ち居振る舞いや表情、話し方を少人数制で指導する。
受講者は職場で中堅・管理職となり重責を担い始める40歳前後が多い。ビジネスの世界にいる女性が求めるのは外面だけを繕うキレイさではない。内面の充実をより際立たせるために外面も磨く。
■中国で在庫切れ
美への意識の高さはニッポン株式会社の国際競争力も高める。中国で昨年、パナソニックのある美容家電の在庫が一時なくなった。柔らかな突起が地肌をもみほぐす頭皮エステ器だ。
「気持ちいい」。北京や上海のビジネス街で美容家電の体験会を開いたら働く女性の心をつかんだ。1台599元(約1万円)と安くはないが、その場で買う人が相次いだ。パナソニックで商品企画を担当するグループリーダーの南波嘉行(43)は「日本人女性のこだわりが海外にない先進製品を生んだ」と話す。美顔器など美容家電の海外販売を18年度に今の倍の500億円に増やす方針だ。
経済産業省は昨年まとめた報告書で、日本が世界をリードする成長分野として美容家電に期待を寄せた。美しさを追う女性が育む技術は世界の女性をキレイにし、日本の産業界も潤す可能性を秘める。=敬称略
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