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男一人旅 南国の離島、竹富島で身も心も「裸族」

2014/2/22

■「ないないづくし」で、まずは心から裸に

夕日スポットとして教えられた「西桟橋」へ向かう。なるほど、日中とは変わって、すれ違う観光客もいない。砂を踏む自分の足音がやけに大きく響くほど、静寂に囲まれている。その静けさを破り、鳥の「ホーホー」という鳴き声が聞こえる。桟橋にも、宿泊客らしき影がポツポツとあるだけ。これが本来の竹富島の姿なのだ。自分ももし日帰り客だったら、この静けさを知ることはなかっただろう。

そういえば先ほどのおばぁから、このへんでホタルが見られると聞いたっけ。時には、巨大なヤシガニが通りを横切る姿にも遭遇するとも言っていた。ハブと出会うのはごめんこうむりたいが、ホタルやヤシガニなら大歓迎。と、期待したが、残念、どちらも姿を見せてはくれなかった。そう都合よくはいかないものである。

夕日を見届けたので、そろそろ宿に戻ろう。集落を横切りがてら、集落中心部にある展望台、「なごみの塔」にのぼる。竹富島は最高所が標高21mという平たんな島で、この塔からは360度のパノラマが楽しめる。おばぁに聞いた話では、竹富島は、集落全体が重要伝統的建造物群保存地区。夕暮れ過ぎの空の下、確かに統一感にあふれた民家が広がっている。先ほど聞いた、島のルールが守ってきた景観なのだろう。

赤瓦の民家の下では、どのような生活が営まれているのだろうか。スーパーマーケットもなければ、コンビニエンスストアやファストフード店もない。信号も1つもなく、ガソリンスタンドの営業は1日に30分間のみ。玄関がないために家屋へは居間から出入りし、鍵さえもない。さらに何と、交番もなければ、警官もいないのだという。

ホテルの部屋に戻ると、自宅に帰ってきたような気分になっていた

自分の日常にはあって当然のものが、ここにはないのである。その代わり家を出れば、前の路地を歩くのは水牛……。これが同じ日本なのだろうか。今までの自分がまとっていた「何か」が、一枚一枚はがされていくような気がする。

自分はこの島に、裸になってくつろぐために訪れた。それは文字通り「服を脱いで」という意味だったのだが。島に着いてわずか2時間たらずで、体が裸になる前に、心が裸にされてしまったことに気が付いた。あと2日、どんな楽しみが待っているのだろう。この胸の高まり、久しぶりだ。

(ライター 笹沢隆徳、写真 土屋明)

[JAGZY 2013年6月12日付の記事を基に再構成]

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