育休を取りたい男性部下への「パタニティハラスメント」も
実は、3割を超える男性が「育休を取りたい」「育児のための短時間勤務制度を利用したい」と考えている(厚生労働省「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」2008年、図3)。にもかかわらず、実際には取得率1.89%(図1)にとどまる。その背景には、男性社員の育児支援に対する根強い抵抗感がある。
同調査で、育児休業の取りやすさについて聞いたところ、女性社員で「取得しやすい」と答えた人は73.5%、一方共働きの男性社員の場合は、「取得しにくい」が86.3%に上る。
男性の育児参画に理解がある、ごく少数の職場では、エース社員型(恵まれた職場で、周囲から期待されている男性)、あるいはマイペース型(評価の低下を意に介さない、我が道をいくタイプ)は本格的に取得するようになっている一方で、大半の男性は取得したとしてもわずか数日、その他の圧倒的多数は育休を取得したくてもできない職場環境にある(図4)。
男性社員とはこうあるべきだという先入観により、上司が部下の育休取得を妨げる「パタニティ(=父性)・ハラスメント」も水面下では進んでいる。2013年5月に日本労働組合総連合会の調査が公表されてから、「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」という言葉が広く世に知られるようになった。マタハラとは、妊娠した女性社員に対して、妊娠・出産が業務上支障をきたすとして退職を促すなど嫌がらせ行為をすることを指す。これに対して、男性社員が育児休業を取ったり、育児のための短時間勤務やフレックス勤務をしたりすることを妨げる行為は「パタニティ・ハラスメント」とでも呼ぶべきものだ。
背景には、世代による子育て観の意識ギャップがある。中高年世代と子育て世代では、子どもとの向き合い方に対する意識が大きく違う。