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困った時は「原理原則」に戻る

~ママ世代公募校長奮闘記(9) 山口照美

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NIKKEI STYLE

「夏休みの学校は想像以上に忙しかった!」という記事を書くつもりでいたのに、「大阪市の公募校長・公募区長」がらみの報道があると発信にも気を遣う。テレビでは発令式の映像が何度も使われ、真ん中にいる私がイヤでも目に留まる。ああ、明るめのグレーのスーツなんて着るんじゃなかった。翌朝、登校してきた子どもたちに言われる。「校長先生、テレビ出てたやろ!」

ちょっと困っているのは、著名な教育関係者やコメンテイター達が、他の公募区長や公募校長の現状を調べずに、まとめて簡単に批判してくれることだ。ネットやテレビでの発言には瞬発力が求められ、断言した方が「頭がいい」と思われる風潮がある。影響力のある人は、もう少しだけ立ち止まって発言してもらえると助かる。元情報に当たる、別の角度から考える、深く考える……「熟慮」は評価されない時代なのだろうか。

「考える」ことから逃げない子どもを

私は進学塾で、公立高校への進学がしんどい子から灘・開成レベルの中高受験までの国語を指導していた。予備校でセンター試験と小論文の授業を持っていたこともある。手ごわい読解や記述問題に当たると、子どもたちは、すぐに「わからへん」と問題を投げ出す。いつも言っていた。「それは『わからへん』のと違う、『考えてへん』って言うんや。頭から煙が出るほど、考えてごらん」

試験本番では、問題を時間内にこなすことも教える。しかし、思考に耐える頭を作るには、難しい言葉の意味を一つずつほどき、著者の論理をたどって理解し、設問と向かい合うトレーニングが絶対に必要だ。語彙が少なければ、漢字や辞書引きの訓練を経て言葉の力を養う。小学校の授業は、教師の「発問」によって、子どもの思考力が育つかどうか決まる。自由な発想や発見をどんどん答えさせる工夫は、塾ではじっくり取り組めないところだったので、うらやましく思いながら授業を見ている。

「思考を止めるな」という姿勢は、校長も教職員も一緒だ。

「あの子は落ち着きのない子だから」と決めつけてしまえば、そこで話が終わってしまう。なぜ落ち着きがないのか、なぜノートがきちんと取れないのか、なぜ反抗的なのか。

目先の対処をしながらも、深くいろいろな角度から考える。どこの小学校でもあると思うが、敷津小学校では月に一度、児童の情報を全ての教員で共有する連絡会がある。日々の情報交換に加え、みんなで話し合うことで「何が原因か」「根本的な解決のためにどうすればいいか」を考える。

保護者との連絡も密だ。この学校に来て、朝に夕にひょいと気軽に家庭訪問に行く先生たちの姿には、感心している。

困った時は「子どものため」が原理原則

ただ、多忙になってくると、先を読む力や深く考える力が落ちてくる。そして、学校にはさまざまな要求が押し寄せてくる。保護者は自分の子を一番に思う。要求が異なるのは、当然だ。学校は地域のものでもある。伝統を重んじる人もいる。全体としては改革の方向に進んでいる。教職員でも立場によって、重点項目が違う。休み時間は運動場に出て遊び、体力をつけさせるべきか。安全面を考えると、ボール遊びは可にするか不可にするか。修学旅行先を検討するにも、いろんな意見がある。

先日、校長会による新任校長研修があった。

その中で「困ったら原則論に立ち返れ」と言われた。学校運営における原理原則は「子どものため」。どんなに意見が割れても、「子どもたちにとってのベスト」を考えると、落としどころが見えてくる。そこで「どんな子どもに育てたいか」のビジョンを共有する必要がある。12歳の子どもたちは、10年後には社会に出る。どんな時代になっていて、どんな力が求められているか。

各学校にはもともと「学校教育目標」があり、ホームページに書かれていることが多い。自分の子どもが通う学校の教育目標を言える人は少なく、児童も認識していない学校もある。

大阪市外のある民間人校長の方は、学校教育目標を変えるのに3年かかったそうだ。私もたまに言われる。「140年の歴史のうちの、数年を預かっているだけ」。それも一理あるが、インターネットがインフラになったことと、アジア諸国が力をつけたことで労働市場は激変している。時代に合わせて変わるものを、受け入れる柔らかさも必要だ。

「未来をつくる子ども」を育てる

私は、従来の学校教育目標を「守るべき伝統的教育目標」としてとらえている。「じょうぶなからだ 豊かな心 考え やりぬく子」。特に「考え やりぬく子」は、これからも変わらず必要な力だと思う。この目標を基盤に、学校教育目標を新たに設定した。

「未来をつくる子ども」

この10年を振り返っても、消えた市場、なくなった職業がある。夫の実家は小売りの米屋だが、時代の流れについていけずに閉店してしまった。一方、ネット販売やギフト需要、自然志向に目をつけた米屋は生き残っている。情報を集め、多角的に考え、深く思考を掘り下げて判断し、行動する。前例にとらわれず、試してみる。頭の柔らかさと粘り強さの両方を、育ててやりたい。私たち大人もまだ知らない時代を知恵と勇気で切り開く、「未来をつくる子ども」を。

大阪市では、校長主導のマネジメントで「特色のある学校づくり」が求められている。特色を出す以前に、学校には解決すべき課題がある。1学期の間は、課題解決を中心に動いてきた。どの教職員も、「子どものため」という軸を持って、日々奮闘している。管理職は少し先を見て、子どもたちのチャレンジを支援する。

「一歩前へ!」と、9月の学校だよりに書いた。

「自分には無理」ではなく、「やってみる」。そのためには、チャレンジをバカにしたり、失敗を笑ったりしない学校づくりも大事だ。そして、どんなに才能があっても、一人では何もできない。公教育が大事に育ててきた「豊かな心」や「思いやり」は、10年後も変わらず大切だ。誰にでも得意・不得意がある。個性がある。互いを認め合う気持ちを、より一層育てなければならない。

たくさんの外国人の若者が日本企業で就職し始めている。意欲のある人材だけが、海外に出ていく時代は終わった。今は、国内で多彩な人と一緒に働く時代だ。物おじせず、コミュニケーションを取る大人になってほしい。2学期から学校に来たネイティブの外国人講師に、思うように話しかけられない自分を奮い立たせながら思う。まずは大人から。

小学校の英語教育について、全国学力テストの結果公開について、土曜授業について。複数の視点からの意見が入り乱れるたびに、自分の学校の子どもたちの顔を思い浮かべる。

困った時は原理原則に帰ろう。

その判断、その方針は「子どものため」になっているだろうか?

「今の子ども」にプラスでも「未来の子ども」のためにならないこともある。

ベテラン教師がつぶやいた一言が、心に刺さっている。

「ていねいさは、優しさではない」

手取り足取りで自信をつけさせる時期と、自立に向けて手を離す時期と。

2学期は、運動会や芸術発表会など大きな行事が待っている。行事にまぎれて、学習面で集中力が落ちる時期でもある。教職員が子どもたちを引っ張っていく。そして管理職が教職員を引っ張っていく。チャレンジする大人を見て、子どもは伸びていく。

さあ、新学期。

ぐっと大きく、「一歩前へ!」

山口照美(やまぐちてるみ)
同志社大学卒業後、大手進学塾に就職。3年間の校長経験を経て起業、広報代行やセミナー講師、教育関係を中心に執筆を続ける。大阪市の任期付校長公募に合格、2013年4月より大阪市立敷津小学校の校長に着任。著書に『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)など。ブログ「民間人校長@教育最前線レポート」(http://edurepo.blog.fc2.com/)も執筆中

(構成 日経BP共働きプロジェクト・日経DUAL編集部)

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