2014/3/4

ホントが知りたい 食の安全

体験談、お試しセットにも注意

次に消費者が引き込まれてしまうのが体験談です。すなわち「サクラ」です。

体験談があると本当に効果があるような感覚になりがちです。しかし、こういった体験談を書いているのはそういった企業に雇われたモニターであることがほとんどで、名前を貸している人たちもお金をもらってやっていると認識すべきでしょう。その体験談の情報が本当に意味があるものかというと、残念ながら、科学的には何ら根拠情報にはなりえません。

その次に来るのが「無料」あるいは「ごく低価格」のお試しセットです。お試しセットを頼むハードルを下げることで、消費者は容易にやってみようという気になります。ここで注意したいのは、お試しセットを頼んだ時点で個人情報が相手側の企業にわたることです。

無料サンプルをもらっても、効果は期待できないことも多いもの。10日分のサンプルでは効果が出ないので、2カ月はしないといけないと言われると、本契約してみようという気になってしまうのです。そこには自分の10日間の経験を否定したくないという心理が働きがちです。

販売が店頭販売ではなく、通信販売になっているのも要注意です。通信販売は、消費者を一本釣りで釣り上げるという商売に適しています。

というのも、消費者を集団から隔離し、情報の非対称性が発生しやすい状況に持ち込むことが重要な要素になっているからです。習慣性を作りやすく、企業側が望んだ情報しか入らないようにしていくわけです。そもそも広告の作り自体が、消費者を釣るための「釣り針」になっていると認識すべきでしょう。

価値ある商品に使われることも

ただし、サンプルや通信販売については、本当に価値のある商品でも使われる手法です。どんな企業であっても、競合他社へ顧客が逃れないようにする囲い込みをするのは特別なことではありません。

そういう意味では、最も判別しやすいのは、誇大広告でしょう。繰り返しになりますが、普通に行われている医療以上の医療効果がある食品など存在しません。確かに食は健康を保つ本来の要素ですが、それはバランスよく食べることが重要なのであって、特定の食品だけを食べ続けるだけで大病が治ったり健康が維持されるというわけではない、と確固とした判断基準を持ってください。

こういった5つのシグナルにぴったり合った怪しい食品が巷にはあふれているので、みなさんも注意深く見始めるとすぐ気づけるようになると思います。

有路昌彦
 近畿大学農学部准教授。京都大学農学部卒業。同大学院農学研究科博士課程修了(京都大学博士:生物資源経済学)。UFJ総合研究所、民間企業役員などを経て現職。(株)自然産業研究所取締役を兼務。水産業などの食品産業が、グローバル化の中で持続可能になる方法を、経済学と経営学の手法を用いて研究。経営再生や事業化支援を実践している。著書論文多数。近著に『無添加はかえって危ない』(日経BP社)、『水産業者のための会計・経営技術』(緑書房)など。

[ecomomサイト2013年12月10日付記事を基に再構成]

[参考] 家族と自然にやさしい暮らしがテーマの季刊誌『ecomom(エコマム)』。2014年春号では、「『食』からはじまる家族の健康」「イマドキの小学校の英語どうなっているの?」「震災を忘れない――。今からでもできること」などを特集。公式サイト(http://business.nikkeibp.co.jp/ecomom/)で登録すると、無料で雑誌が届く。
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