環境保全、船で世界一周…志高い同輩たち熟年クマガール雑記

現役時代、職場の会議などでは「紅一点」となることが時々あった。今では「銀一点」だ。大学の教室でも研究室でも、シルバー世代の学生は大体、私1人しかいない。だから、ごくまれに同輩をみつけるとうれしくなる。私と入れ違いの格好で東京農工大の研究室に同じ研究生としてやってきた大久保允文さん(69)も、その1人だ。

里山、イラン革命、リビア…次々に広がる話題

シニアの研究仲間、大久保允文さん(左)と筆者(東京都府中市の東京農工大)

灌漑(かんがい)を中心とした農業技術のエキスパートで、中東や東南アジア、アフリカなどで長年、農業関連のコンサルティング業務に携わった。その大ベテランが「コンサルティングは一種の虚業」と穏やかならぬことを言う。「役人相手に仕事をしているうちは本などで得た知識でも対応できた。でも、現場で農民と接する機会が増えると、自分の実力不足を思い知る場面が多くなって……」

退職した後、母校の農工大に舞い戻ったのは、農業を学び直し、環境保全との両立の道を探りたかったからだ。「アフリカでは今、行き過ぎた森林伐採への反省から、農民たちが土地の一部に木を植え、たきぎなどに利用しようとの運動が起きている。共感する部分がありますね。で、日本はどうか。昔の里山も高齢化や後継ぎの不在で衰退し、放棄された耕作地などに野生動物が押し寄せる。ならば里地・里山の保全をテーマに勉強しようか、と」

人影の絶えた里山は、山奥でドングリの実りが悪い年には、腹をすかせたクマにとっても格好のエサ場となる。そんな話題にはじまって、経験豊富な元ビジネスマンとのおしゃべりは、イラン革命の顛末(てんまつ)から、リビアの故カダフィ大佐の知られざる素顔にまで次々に発展。たまに大学に出かけて顔を見ると、つい「帰りにコーヒーでも?」と声を掛けたくなる。

東京海洋大学の制服を着る長田一隆さん(東京都江東区)

もちろん若い学生との会話からも教えられることは多いが、ややもすると「なんですか、それ」「知らなかったー」などの反応が多くて、あまりの年齢差にがく然とすることも。ツーカーで分かり合える同世代の存在はやはり貴重だ。

東京海洋大の授業で時々一緒になる長田一隆さん(64)とも、同じ文科系出身者として理系科目の難解さをぼやき合ったりする。私のようなマイペース派と違い、バリバリの大学3年生だ。千葉県庁で主に農林、土木、環境などの分野を担当し、定年退職後は行政書士の看板も掲げた。

だが、好きな船への思いが抑えられず、「将来、ヨットで世界一周するために」と、海洋工学部のAO入試(社会人枠)に挑戦。面接では教官たちから「孫のような年齢の学生と一緒にやっていけるか」と何度も念を押されたと苦笑する。