食の偽装で見えてきた「産地ブランド」の限界(加藤百合子氏の経営者ブログ)

農作物は「適地適作」が基本ですが、最近は気象変動の幅が大きくなったせいで、適地が適地でなくなる、逆に、適地でない所が適地になる事態があちらこちらで見受けられるようになっています。果樹でも野菜でも、時期の適地を求めて人が動いていく生産形態のほうが効率的なのかもしれません。

総菜大手との新タマネギの取引が決まりそうです

一部の農業生産法人は、すでにそのような取り組みを始めています。長野県のレタス生産者が仕事ができない冬の間、温暖な静岡県に移動して借地でレタスを作る。逆に静岡県の高糖度トマトの生産者が暑さが厳しい夏に長野県に移動する、といったケースがあります。グローバル青果企業のドールが独自の生産技術により世界各地でほぼ同一品質の果物を提供しているのも、大きくはこの部類に入ると思います。

消費者が要求するハードルも高くなっています。ある有名食品宅配企業の悩みのひとつに、カテゴライズの難しさがあるそうです。例えばミカン。「有機栽培のミカン」では顧客は満足しませんから、愛媛産有機栽培ミカン、あるいは和歌山県産有機栽培ミカンとして売る。それでも「先週届いたのは甘かったけれど、今週のは酸っぱい。この味だったら注文しなかった」といったクレームが来るそうです。同じ産地でも先週はA農家、今週はB農家からの出荷。複数農家からの調達で量を確保しないと、顧客の注文を受けきれません。

では「愛知県産有機栽培の酸っぱいミカン」のように、もっと細かい仕分けが理想的なのでしょうか。これは悩みどころです。ITを駆使すれば対応は可能で、当社などにとっては商機になるかもしれません。

でも、A農家さんの出荷数量は週によってバラバラで、しかも絶対量が少ない。消費者は抽選になるような食材に毎週注文を出すでしょうか。細かく指定→絶対量が足りない→偽装、という悪循環に陥る可能性も否定できません。安全安心を担保した上で産地は特定せず「甘いミカン」「酸っぱいミカン」としたほうが、喜ばれるかもしれません。

いずれにしろ、農作物のブランド化は今後は「作り手」と「生産技術」が中心になっていくと私は予想します。「頑固な○○さんが育てたメロン」とか「○○ファームのトマト」とか「○○農法のトウモロコシ」といった具合に。産地名は引き続きブランド価値を持つでしょうが、こだわりすぎると弊害も出てくるため、その意味合いは軽くなっていくのではないでしょうか。みなさん、どう思われますか。

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読者からのコメント
ひの正平さん、60歳代男性
ブランド??難しいですね!!要は消費者のレベルでは、ないでしょうか。その人の味覚、感受性、感覚、十人十色です。個々人に、見合った商品を、提供するのが、ベストでは、ないでしょうか~~
ジンジャーマンさん、30歳代男性
農業とITの融合の可能性、加藤代表ならではの視点で語られる農業の現状分析と未来予想図の提案を楽しみにしています。
☆けむりさん、50歳代男性
農産物は、ブランドと生産場所で同じような品質と均質化は、土壌、天候等の変化でかなり困難だと思いますが、生産地とブランドで固有の特徴は持ちえるのではないでしょうか。例えば、ワインでボルドー、ブルゴーニュ等の産地と銘柄=製造所で大体の味のイメージがあり、それに年によるブドウの良し悪しが変化しますが、産地や銘柄の区分が分からなくなる事は無いのと同じだと考えます。加藤さんの仰る「作り手」が、「銘柄」に匹敵する訳です。

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