西武鉄道、幻の奥多摩開発計画 「第二の箱根に」

「豊島園、西武園にささげた情熱に倍する努力と資金を傾注」

「奥多摩湖開発についての陳情」と題したその文書には、9ページにわたって計画の意義や内容が記されていた。1963年(昭和38年)提出の資料の一部を引用しよう。

「せっかく親しまれ始めたものの、開発が進まず忘れ去られようとしている奥多摩湖の現況を見ます時、その実態は期待を持った地元民はもとより、単に東京都民のためならず、国土の狭隘(きょうあい)と資源の貧困をかこつ日本のため放置できない重大事と存ずるものであります」

その上で、次のように意気込む。

「当社は豊島園、西武園箱根園等に捧(ささ)げた情熱に倍する努力と資金を傾注して社会の要望に添うべく『第二の箱根』にも比すべき開発を計画することが経験と実績を有する当社の使命であると確信し、あらためて実行を決意した次第であります」

ホテルや遊園地、ヘリポートに「高級」キャンプ場も

西武鉄道の奥多摩湖開発計画を示す図面。奥多摩湖の周辺に観光施設が点在する様子がよくわかる。国立公文書館所蔵

これほど強い決意でまとめた計画とはどのようなものだったのか。同社が東京都に提出した「奥多摩湖施設計画概要図」を見てみよう。

核となるのは東京方面からの玄関口、水根駅と一体化したステーションビルだ。そこからロープウエーやリフトを乗り継ぐと倉戸山の麓に出る。

ヘリポートも備わった駅の前にはホテルや遊園地があり、そこから湖畔にかけてキャンプ場が点在する。わざわざ「高級キャンプ場」と銘打つからには、それなりの設備を見込んでいたのだろうか。

概要図によると、湖の水面上を渡るロープウエーが計画されていた。陳情書には「楽しみながらダム周辺に至るルートを開発する」とある。その南側にも遊園地があり、湖面上には「モーターボート遊園地」、その横には「踊る噴水」があった。

全般に鉄道の利用を促すための計画ではあったが、車で訪れる人にも目配りしてある。各所に駐車場を配置し、ドライブインもあった。東京都に道路の整備も要請している。さらには西武自動車による観光バスの増発を計画していて、水根駅付近にバスターミナルを設置する予定だった。

これらをすべてゼロから作り上げるとは、何とも壮大なプランだ。

西武鉄道が東京都に提出した「奥多摩湖開発についての陳情」には、「第二の箱根」の文字が躍る。国立公文書館所蔵
西武鉄道の奥多摩開発計画は、同社が運輸省(当時)や東京都に提出した公文書に詳細が書かれている
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