ゆるほわの魅力 iPhoneでも撮れる「ぼけ写真」
ピントが合っている範囲が少なく、見る人の想像力をかき立てる、ゆるくてほんわりした写真――。一眼レフカメラで撮ったように背景をぼかした写真をiPhoneで撮りたい、と思う人も多いだろう。そんな写真を撮るために、iPhoneを持ちながら、わざわざ一眼レフも提げて歩く女性が少なくないようだ。何とかしてiPhoneでこの「ゆるほわ」な写真は撮れないものか。アプリや周辺機器も活用しつつ、挑戦した。
■自然なぼけ、「構図」の取り方がカギ
まずは手ごろにぼけ味を出せるアプリを使ってみよう。報道カメラマンとしては仕事で使わないが、画像処理として背景をぼかす「Big Lens」(有料)など専用アプリはいくつかある。
今回は「After Focus」(同)を使ってみた。ぼかす範囲の選択が感覚的にできて自然なぼけを表現できるので、おすすめだ。食事の写真もメーンとなる素材以外をぼかしてみると、雰囲気ががらりと変わる。
自然なぼけに見せるコツは、ぼかしたい物とぼかしたくない物(背景)に距離感がつくような構図や角度で撮ることだ。
■6センチまで寄れる
実はiPhoneのカメラだけでぼけを実現するのは難しい。レンズの小ささや画角(焦点距離=33mm相当)が原因なので仕方がないのだ。
この画角だと一眼レフでさえも、簡単に撮れるぼけは2種類となる。奥にピントを合わせてごくごく手前をぼかすか、ごくごく手前にピントを合わせて奥をぼかすか。iPhone単体でもある程度はできる。試しに赤ちゃんを撮るのに、iPhoneにおもちゃをくっつけてみた。ぼけにも使えるだけでなく、おもちゃに気を引き寄せて自然な表情を引き出せる。
続いて、思い切り手前に焦点を合わせてみるとどうだろう。iPhoneのカメラはおよそ6cmまで寄ってピントが合わせられる。どちらもコツは背景の選び方。白い壁を背にするなどシンプルであればあるほど、ぼけの限界を感じさせない写真になる。
■アプリでミニチュア写真も
もっと背景をぼかしたいなら、家電量販店などで売っているスマートフォン用のマクロレンズを使ってみよう。ぐっと手前にピントが合わせられる。ただ、対象に近づいたアップの写真しか撮れなくなるため、小さいものを被写体に選ぼう。
これらとは別に画像処理アプリ「Snapseed」を使うと、ぼけを生かしたミニチュア写真も簡単に作成できる。高い位置から見下ろして、地平線(水平線)を入れないように撮るのがコツだ。人がいることでミニチュア感はぐんと増す。
私(寺沢)がいわゆるミニチュア写真を初めて目にしたのは、2004年の世界報道写真展「World Press Photo」に入賞したDavid Burnett氏が撮影したアテネ五輪だ。旧来の撮影機材を使って競技会場から撮った写真は、ぼけが利いてアスリートたちがかわいらしくも見える。ストレートなニュース写真以外にも報道写真はその領域を広げていると当時驚いた。その世界報道写真展が、今年もそろそろ東京都写真美術館(東京・目黒)で始まる。どんな写真が並ぶか楽しみだ。ぜひみなさんも足を運んでみては。
(写真部 小林健・湯沢華織・寺沢将幸)
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