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女性手帳、反対するだけで終わらないために

産婦人科医 吉田穂波

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NIKKEI STYLE

 安倍内閣が導入を検討していた「女性手帳」。市民団体などから「女性の生き方の選択に国が干渉すべきではない」などと批判が相次いだこともあり、当面配布の見送りが決まりました。女性手帳について、4児の母でもある産婦人科の吉田穂波さんはどのように考えているのでしょうか。

私が最初に「女性手帳」という記事を見たとき、「ああ、またね」と言う程度にしか認識しませんでした。と言うのは、今までにも、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会が「女性の生涯健康手帳」を発行しており、ほかにも「女性○○手帳」と名のつく小冊子にはたくさんお目にかかってきたからです。

子を持つ母親ならだれでも、子どもの数だけ「母子健康手帳」、そして「お薬手帳」「歯の健康手帳」などをお持ちのことでしょう。

あっという間に忘れてしまう医療保健関連のイベントを記録しておくために、手帳というものは大変ありがたい記録ツールです。私は医師として、そのほかにも「服薬手帳」「血圧手帳」「体重管理手帳」など、健康サポートのためのいろいろな手帳を知っています。これらをすべて管理するのは大変だなぁ、なんて思っていました。

妊娠・出産適齢期の知識は必要

今話題の「女性手帳」には、妊娠適齢期などの必要知識や自治体の支援施策を記した部分があるようです。妊娠適齢期や産みやすく育てやすい年齢がある、ということは、女性にとって必須の知識です。

女性手帳のコンセプトを産婦人科医の立場から改めて見直してみると、妊娠・出産適齢期に関する知識は、持っていて邪魔になるものではありません。「いつのまにか自分では選択できない年齢になっていた!」「産むか・産まないかではなく、産めるか・産めないかという年齢になっていた!」という状況を防ぐことは、キャリア・デザインの一助になります。

一昔前なら、親から子へ、学校や社会から、子どもを持つってすばらしい、やっぱり20代で子どもを持つ方が健康的なんだよ、と言われたものでした。もちろん、母親にこう言われた娘が反発したり、上司からこう言われて「セクハラ」と受け止めるというケースもあったのでしょうけれど。

どうも、上から「啓蒙」と出されると、「少子化の責任を女性だけに押し付けている」という抵抗や反発の方が目立つようです。カップルが2人でこのような手帳を見て、2人で子育てについて考えるのが理想なのでしょうけれど。

女性が幸せになることが一番

ハーバードを卒業した2010年、私は、安倍フェローシップという研究助成をいただいて、少子化に関する研究をしていました。少子化の原因が、自然な人口減少であるならば止められません。でも、もし女性がハッピーでない事情があり、それが産むことの障害になっているのであれば、それは問題だと考え、少子化の要因を探り、社会の中の絆・結びつきや、女性の自己肯定感の向上など解決方法を探っていたのです。

現在も、国の公式なデータや、産後の女性への聞き取り調査、女子大生へのアンケートなどを組み合わせながら、少子化に関する前向きな解決策の研究を続けていました。

子どもは永遠に子どもではなく、近い将来、国の根幹を成す人的資本となり、経済も含めて日本という国を背負うことになります。政府だけでなく、私のような一人の母親も、そういうマクロな視点、シリアスさを持って子育てができると、目の前の大変さだけでなく少し先を見通せる気持ちになります。

しかし、だからと言って「国のために産め」という姿勢は受け入れられるのでしょうか。「女性が幸せになることが一番、そのために役立つこととして」健康知識を普及させるというのであれば大歓迎です。

「お国のため」と言われてもうれしくない

私が4人の子どもを連れて歩いていると、周囲の高齢者の方々から、「偉い、偉い。表彰状ものだ」「少子化に貢献している」「将来、私たちの年金を払ってくれる」という言葉をいただき、とても複雑な気持ちになります。「がんばって育てているね」ではなく、「お国のために産んでくれてありがとう」と言われてうれしい親が、いるでしょうか。いずれは国家の財政を担わなくてはならなくなるとしても、今から高齢者の年金を払うために子どもを育てている親が、いるのでしょうか。

子育て中の多くの親は、子どもが豊かな子ども時代を過ごし、たっぷり愛情を受けて育ち、いつかほかの人に愛情を注げるような、どこでもたくましく生きていけるような、そして、世のため人のために働くような人間になって、独り立ちすることを願っています。子どもの幸せや生きがいと社会に貢献することが自然につながればいいのですが、もし、政府や世間の関心が、未来の納税者としての数には関心があるけれど、子どもの幸せや健康や保育は知らんぷり、というのでは納得がいかないでしょう。

特定の見方で「これは正しい」「間違っている」とジャッジするのではなく、女性の気持ちをより深く理解するために、「どんな人生を目指したいのか」「自分が望む生き方をするにはどうしたら良いのか」など、実際に生活を生きている女性に寄り添う形で、調査や研究をしたうえで、ニーズに合わせたサポート・ツールを見つけられないかな、と思いました。

男女双方で支えあうもの

ニーズ・アセスメントをし、障害となっている要因(Determinants of barriers)を特定し、その部分を治していく…。これは、私が公衆衛生の研究でよく使う方法です。

どうすれば内閣府の「少子化危機突破タスクフォース」につながることが出来るのかは分かりませんが、クレームを言うよりは建設的な代案を出して、せっかくの「女性の健康をサポートしたい」という世間からの関心をつぶさないよう、「二度と口にできない話題」にならないよう、うまく生かしていければと願っています。

子どもを持つ・持たないは個人の自由意思で選択できることも踏まえたうえで、誰でも産める、誰でも親であることを楽しめる、誰でも親になることを経験することができる環境を整え、子どもを持つことが自分にとっても周りにとってもプラスになることを社会的にも認め、みんなでシェアできる社会になればと思います。

子どもや家庭は男女双方で支えあってはぐくむもので、女性の産み時や産むかどうかの選択には夫、上司の理解と協力が欠かせません。女性だけではなく男女全体の常識として女性の強みやその活かし方を知り、お互いを誇りに思えるような空気作りが必要です。男性も女性も一人一人が幸せで、個人の能力を十分発揮して楽しい人生を送ることが、家庭を持つための基本となります。今回の少子化対策の良い部分を大事にしながら、次世代に誇れるような政策作りができるよう、応援したいと思っています。

吉田穂波(よしだ・ほなみ)。
 産婦人科医。国立保健医療科学院 主任研究官。独・日・米3カ国で4人を出産した経験もふまえ、ママこそ自分のカラダをもっといたわってほしいと思いながら、診察や研究にいそしむ日々。

[ecomomサイト2013年5月21日付記事を基に再構成]

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