「体にいい」とうたわれているものの多くには、いろいろと「非科学」の世界が広がっています。問題なのは、非科学であるにもかかわらず、科学のふりをするものが巷にあふれていることです。

例えば比較的最近の例では、消費者庁からおとがめを受けたものとして「マイナスイオン」があります。マイナスイオンの効果については懐疑的な意見を持つ科学者が多いにもかかわらず、大手企業はあたかもそれが科学的に確立した機能のように商品を販売しているケースもあります。科学論文を読む機会がない人々の間では、効果があることの方が常識になっているような状態です。
酵素は体内で分解される
食品の世界はさらにいろいろなものがあり、しかも次から次へと生まれてくるのでキリがありません。今回は最近流行りの「酵素」について取り上げましょう。ここで言う酵素とは「酵素ドリンク」など健康食品の世界でブームになっているものです。
そもそも酵素というのは高次のアミノ酸化合物(タンパク質)であり、代謝系に何らかの働きをもたらすものです。人の消化・代謝は酵素の働きによるものが多いことは広く知られています。
酵素は生命の活動の重要な要素になっており、それゆえ植物や動物などの多くの生物が酵素を持っているわけです。そこから、「酵素を摂取すれば健康になる」とか、「アンチエイジング効果がある」という話が出てきているようです。
ちょっと冷静に考えてみましょう。
タンパク質は体内に入るとアミノ酸に分解されて小腸で吸収されるというのは、中学校までの生物で学んだとおりです。酵素もタンパク質の一種ですから、体内で分解され、体内で必要な分だけ必要な形に合成され、生命の活動に使われます。
酵素を口から飲むと、分解されるわけで、その酵素の効能が得られるという科学的根拠はどこにも存在しません。