親を要介護にさせないために 兆候の見抜き方国立長寿医療研究センター研究所長 鈴木隆雄氏

高齢者が要介護状態になる手前には、必ず、「老年症候群」の兆候がある。転倒、食べこぼし、尿失禁――などだ。「年をとったからだろう」と放っておくと、介護が必要な状態になってしまう。国立長寿医療研究センター研究所長の鈴木隆雄氏は「家族や、地域の人が高齢者と常にコミュニケーションをとり、老年症候群の予兆を見逃さずに早期に予防策を講じることが必要」と訴える。

高齢者対応、65歳以上ひとくくりは無理

――いま、日本は超高齢社会と言われていますが、どういう社会を言うのでしょうか。

すずき・たかお 1951年、札幌市生まれ。札幌医科大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。札幌医科大学助教授、東京都老人総合研究所副所長、東京大学大学院客員教授などを経て、独立行政法人国立長寿医療研究センター研究所長。専攻は古病理学、骨の老化と疫学。主な著書に「骨から見た日本人―古病理学が語る歴史」(講談社学術文庫)、「骨量と骨粗鬆症」(主婦の友社)、「超高齢社会の基礎知識」(講談社現代新書)などがある。

鈴木 総人口のなかで65歳以上の高齢者の割合がどんどん増えており、それが7%を超えた社会を「高齢化社会」といいます。その2倍の14%を超えると「高齢社会」、さらにその3倍の21%を超えた社会を「超高齢社会」と呼んでいます。現在は高齢者人口が全体の23%ですので、すでに超高齢社会になっているわけです。

約3000万人が高齢者ということになりますので、7%あるいは14%だった時代のように、65歳以上をすべて高齢者と呼んでひとくくりで対応するのは無理があると思います。

高齢者の健康特性を見ていきますと、比較的若い高齢者の層と、体の衰えが目立つ高齢者の層に分かれます。研究者の間では、比較的若い高齢者である65歳から74歳までを「前期高齢者」、75歳以上になって心身の機能の衰えが目立ってくる高齢者を「後期高齢者」と呼んで、男性、女性、前期高齢者、後期高齢者と、いくつかに区分けしています。それぞれの特性に応じて疾病や要介護状態を予防する方策を立てていかなければいけないと思います。

今後の日本は「高齢者が高齢化する社会」

――後期高齢者医療制度が始まるときに「後期高齢者」という言葉がものすごく批判されました。しかし、75歳以上を後期高齢者と呼ぶ根拠はあったわけですね。

鈴木 後期高齢者医療制度という用語がなんの事前説明もなく出てきたので、その対象となる年齢の方は違和感を覚えたようですね。けれどもその制度全体がだめだという話ではなくて、後期高齢者医療制度が目指すものがなんだったのか、何を根拠として、何をポイントとしてそういうものを新たにつくらなければならなかったのか、といった本質的なことは今後きちっと検証しなければいけないと思います。

――超高齢社会はどんなイメージなのでしょうか。

鈴木 いままでは高齢者人口より若い世代の生産人口が比較的大きな集団としてあったわけですが、そこが全体的に年をとってきた。いま、少子高齢化ですから、高齢者の部分のボリュームだけが大きくなっています。そこが今後10~30年かけて老化していくわけです。これからの日本社会は「高齢者が高齢化する社会」なんです。