2011/12/1

職場の知恵

「メンタルの病などの深刻な状況をもたらす危険性があるストレスの状態は3つあります。『過剰』『継続』『繰り返し』です」(夏目さん)。

ストレッサーが強かったり、複数が重なったりするとストレス過剰になる。強いストレッサーに対抗しようとストレス反応も強く出るが、これは問題解決に向けての力とも言えるので、一概に悪いとは言えない。問題はストレスが過剰なまま、継続したり、繰り返したりなど“引きずる”ことにある。

脳科学の知見を用いてストレス研究を行う東邦大学医学部の有田秀穂教授は言う。「ストレス過剰の状態が続くと、脳内の神経伝達物質の1つであるセロトニンの量が不足します。それが脳の活動低下を招き、うつ病やパニック障害などのメンタルの病を引き起こす。具体的には、次のような2段階で起きると考えられています」。

“戦闘モード”が長引くと危険

第1段階はストレッサーとの格闘だ。抵抗したり、戦ったりして、状況を打破しようとする。ストレッサーが良いことでも、目標を達成しようと頑張る。その際、自律神経は交感神経が優位になり、脈拍数や血圧は上昇し、気分も高ぶる。いわゆる“戦闘モード”に突入する。“戦闘”が長引かず、状況が打破できれば何の問題もない。自律神経の副交感神経が優位になり、自然にリラックスするか、あるいは寝たり、自分で解消したりしてストレスをリセットできる。

問題なのは状況を打破できない時だ。「動物実験で分かったことは、ストレッサーに抵抗し続けて状況が変わらない場合はフリーズ(凍結)し、戦うことを諦める。ストレスを抱えたまま、解決の見通しが立たない状態が続くとストレスホルモンは急増し、脳内のセロトニン量は低下します」(有田さん)。

このメカニズムは、従来から言われてきた経験則とも符合する。「自律神経などが乱れて、体の弱い部分にストレス反応が表れるのが“注意報(第1段階)”だとしたら、気分の落ち込みや不眠が続くなどの心的ストレス反応は“警報(第2段階)”。メンタルの病が目の前に迫っていると警戒すべきです」(夏目さん)。