「目で見た動作を、自分の脳の中で再現しているのですよ」と村田さんは説明する。無意識のうちに“自分も同じように動け”という命令が出ているのだ。「そうやって、行為の意味を理解していると考えられます」(村田さん)。

 「意味を理解する」とはどういうことか? 例えばこんな研究がある。被験者に「笑い」「怒り」などの表情の絵を見せる実験なのだが、口に鉛筆をくわえさせると、なぜか微妙な表情の差がわかりにくくなるという。顔の筋肉を制限されると、表情が読み取りにくいのだ。

つまり私たちは、笑顔を見ると、自分も無意識にほほえもうとする。そして、自分の顔がほほえもうとする感覚を通じて、「この人、楽しいんだ」と理解する。人間はこんなふうに、相手の動きを自分に重ね合わせることで、相手の心を読んでいるらしい。

ミラーニューロンの働きは、この「無意識のまね」現象を見事に説明する。だからこの神経が見つかったとき、「人の心を読む脳機能を発見!」と注目されたのだ。なるほど、それで「DNAに匹敵」なのか。

もっとも、現時点で見つかっているミラーニューロンは、手の動きに反応するものが中心。「表情を読むなどの感情的な共感では、別のタイプのミラーニューロンが働くという説がありますが、まだ未解明。でも、様々な人間関係のやりとりが、身体感覚をベースに成り立っているのは間違いないでしょう」。

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