どちらが有利? じゃんけんで学ぶ「ゲーム理論」桜美林大学教授 芳沢光雄

さて、XはYから与えられる点を多くしたいのであり、YはXへ与える点を少なくしたいのである。そこでXは、Yがグーとパーのどちらを選択しても、その両方を満たす状況でzが最大になるようにxを定めたいとしよう(ゲームでの行動基準)。これは(3)と(4)から、


を満たす範囲でzが最大になるxを定めればよいのである。そこで図3より、x=4/13のとき、zは最大3/13になる。

一方Yは、Xがグーとパーのどちらを選択しても、その両方を満たす状況でwが最小になるようにyを定めたいとしよう(ゲームでの行動基準)。これは(1)と(2)から、


を満たす範囲でwが最小になるyを定めればよいのである。そこで図4より、y=4/13のとき、wは最小3/13になる。


上で注目したいのは、期待値zの最大値と期待値wの最小値が等しいことである。その等しい値が正の数3/13になるので、Xの方が有利と言えるのである。(もし負の数になっていたら、YからXへ負の数を与えることになり、Yが有利となる)。

上で述べたことを一般化させたものに、「ゲーム理論のミニマックス定理」というものがあり、上でzの最大値とwの最小値が等しいことと同じ性質が、この定理で成り立つ。ミニマックスとは、最も悪い(マックス)事態が発生したときの損害が最も小さく(ミニ)なるように判断を下す方法のことである。

ちなみに、その等しい値を決定する図2における(4/13、4/13)のような点が、ゲーム理論の鞍点なのである。両者がそれぞれ最善として選んだ戦略が均衡する点である。

最後に、大学の一般教養の数学について述べたい。現在、微分積分と線形代数(行列やベクトルなど)が主要科目になっているところが多い。実は、これは戦後のことであって、戦前は微分積分だけであった。

なぜ、戦後に線形代数が加わったのだろうか。それは、第二次大戦の敗因に、線形代数も関係していたからである。今回説明したゲーム理論は線形代数を基礎としており、冒頭の例のように戦況・作戦分析などに使われる。線形代数の応用として、軍事物資の輸送問題などに使われる線形計画法もある。いずれもビジネスの場でも応用できるので、大学の一般教養で基礎をしっかり学んでおこう。

芳沢光雄(よしざわ・みつお) 1953年、東京生まれ。東京理科大学教授を経て現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。理学博士。数学教育に力を注ぐ。主な著書に「数学的思考法」「ぼくも算数が苦手だった」「新体系・高校数学の教科書」「新体系・中学数学の教科書」。59歳。
注目記事
今こそ始める学び特集