どちらが有利? じゃんけんで学ぶ「ゲーム理論」桜美林大学教授 芳沢光雄

グーとパーだけのじゃんけんで勝負

ではじゃんけんを使って、ゲーム理論について説明しよう。一般のゲーム理論では、戦術としての選択肢はいくつでも構わないが、今回は選択肢が2つの例で解説する。

人間同士の勝負事の最終段階では、左か右、前進か後退、のように2つを1つに絞ることが往々にしてある。野球でも、直球かフォークボールのどちらに的を絞るか、という判断が勝負の分かれ目となることがよくある。AとBの2人は自分の意志でグーまたはパーを出し、それぞれの得点は表1のように定める。一見、Bの方が有利に見えるが、冷静に考えてみよう。なお、実際にこのゲームを楽しむ場合は、一定の時間を設けて何回か繰り返すと面白いだろう。以下の議論は、1回行う場合として考えている。


いま、Aがグーを出す確率をx(0≦x≦1)、Bがグーを出す確率をy(0≦y≦1)とする。1回のじゃんけんにおけるAの得点期待値をα、Bの得点期待値をβとすると、

   α=0×A・Bともグーを出す確率+3×Aがグー・Bがパーの確率+3×Aがパー・Bがグーの確率+0×Aがパー・Bがパーの確率

   =3×x×(1-y)+3×(1-x)×y

   β=6×A・Bともグーを出す確率+0×Aがグー・Bがパーの確率+0×Aがパー・Bがグーの確率+1×Aがパー・Bがパーの確率

   =6×x×y+1×(1―x)×(1―y)

である。ここでα=β、すなわちAとBが互角になる状況とはどのようなときであろうか。式を変形していくと、以下のようになる。


ここで復習であるが、面積12平方センチの長方形について、たてをxcm、横をycmとすると、

xy=12

という式が成り立つ。これはxとyが反比例していることを示し、xとyが正の範囲でそのグラフを描くと、図1のような双曲線になる。


そこで、表1から導いた式


のグラフは、xy座標平面上で


のグラフをx軸の正の方向に4/13、y軸の正の方向に4/13、それぞれ平行移動させた図2のような双曲線になる。ここで、確率は0以上1以下であるから、0≦x≦1、0≦y≦1となることに留意しよう。


グラフを説明すると、4点(0、0)(1、0)(1、1)(0、1)で囲まれた正方形の部分において、AとBが互角になるのは双曲線上、ということである。

ここで、点(1、0)(0、1)が何を意味するか考えよう。表2の2段目と3段目のケースだ。明らかにAが有利である。一方、点(0、0)(1、1)は表2の1段目と4段目に当たり、Bが有利である。それゆえ、双曲線に挟まれた部分ではAが有利となり、双曲線の外側ではBが有利となる。

とくにx=4/13において、すなわちAが確率4/13でグーを出すときは、つねにAが有利なのである。必ず勝つというわけではないが、このゲームはAが有利なものであることを意味している。例えば、事前にハートだけのトランプ13枚から無作為に1枚を取り出し、それがエース、キング、クイーン、ジャックならばグーを、その他ならばパーを出せばよい。第一印象では「B有利」にも思えたが、ゲーム理論によると結果は正反対なのである。

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