介護はお世話からリハビリへ 「普通の生活」基本に国際医療福祉大学大学院教授 竹内孝仁氏

おむつゼロ、自力歩行などの「自立支援介護」に力を入れる介護施設が増えている。それを推進しているのが国際医療福祉大学大学院教授の竹内孝仁氏だ。家庭で介護できなくなった人が入る特別養護老人ホーム(特養)について、竹内氏は「終(つい)の住み家ではない。要介護度の高い高齢者の自立を助け、自宅に戻す役割が求められる」と強調する。介護は「お世話」から「リハビリ」へと変わろうとしている。

1日に1500ccの水と1500~1600キロカロリーの食事を

たけうち・たかひと 1941年東京に生まれる。66年日本医科大学卒業。日本医科大学教授(リハビリテーション科)を経て、04年より国際医療福祉大学大学院教授(医療福祉研究科)。この間73年より特別養護老人ホームに関わり「離床」「おむつゼロ」などを実践。80年代後半より高齢者在宅ケア全般に関わる。著書に、「医療は『生活』に出会えるか」(医歯薬出版)、田原総一朗・竹内孝仁共著「認知症は水で治る」(ポプラ社)などがある。

――竹内先生は、特別養護老人ホームなどの施設を対象に介護力を向上させる講習会を開かれているとのことですが、どんな講習をなさっているのでしょうか。

竹内 特養の全国団体で、全国老人福祉施設協議会(老施協)という組織があるのですが、そこが施設介護の質を向上させようということで、全国の特養に呼びかけて、毎年110~120、多いときは180の施設を集めて開催しています。もう9年間、開催していますので、受講生は数千人になります。年6回、1回あたり1泊2日で徹底した事例研究をやっています。

高齢者ケアには、基本ケアというものがあって、それを教えています。まず、状況を改善するのは水なんです。高齢者の場合、1日1500ccくらいの水をちゃんと飲んでもらう必要があります。次に、エネルギー源になる食事も1500~1600キロカロリーくらいはしっかり取ってもらう必要があります。しかも、常食(健康な人が日常生活で食べているような普通食)がいい。第3に、便秘にならないようにしなければなりません。便秘は消化機能を反映しています。便通が体調をかなり左右しています。4つ目が運動。要介護の人たちにとって一番いい運動は歩くことです。全国に40くらいある、おむつを使う入居者が1人もいない特養に行くと、入居者をすぐ歩かせるようにしています。要介護度4の人はほぼ全員、歩けるようになります。要介護度5の人がどれくらい歩けるようになるかは、その施設の技術水準次第と言えます。

少しの支えで寝たきりの人も1カ月で1人でトイレに

――要介護度4とか5とかいうのは「寝たきり」といったイメージですが、歩けるようになるのですか。

竹内 介護度5というのは一番、介護度が重い人ですから、人の手を借りないと寝返りさえ打てません。そういう人がつかまり立ちで、だいたい5秒くらい、なんとか倒れないでいられれば歩けるようになります。5秒、倒れないでいられたら、即刻歩行器を使います。

初めは寄りかかっているのですが、寄りかかると歩行器は前のほうに進みます。そうすると足が引きずられていって、歩行運動が自然にできるようになります。朝昼晩、食堂に行くときに「途中まででもいいですから、がんばって歩きましょうか」と言って、歩行器を使うようにすると、2週間くらいで、歩行器を使って歩くことができるようになります。完全に寝たきりだった人が1カ月くらいで、少し支えてあげると、手すりにつかまって、そろりそろりとトイレに行けるようになります。

なんで歩くことに重点を置くかというと、歩くことが自立につながるからです。病院に行ってすぐにおむつをされるのは歩けないからです。トイレまで歩ける人はおむつは要りません。歩くと便通が良くなります。そして、「歩けた」というのが生きる励みになります。歩けるようになるとあらゆる活動が活発になります。

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