がん、心疾患、脳疾患……男の病はいくらかかる?
日経ヘルス・フォーメン
40~50代男性が気になる大きな病気の医療費は高額だ。病気の発症、検査、治療、入退院までで、例えば「脳出血」は約214万円、「胃がん」も100万円を超える。
だが、実際にはこんなに払う必要がないことをご存じだろうか? 日本の医療制度では、病院の窓口で払う費用は、保険適用される診療に対する医療総額の3割負担(70歳未満の場合)。さらに「高額療養費制度」といって、ひと月の医療費の自己負担金が一定額を超えた場合、超えた部分の金額が支給されるのだ。もちろん、病気の後遺症や寝たきり状態での治療も対象になる。
例えばひと月に100万円の医療費がかかった場合。ひとまず3割の30万円を窓口で払うが、その後加入している公的保険(健保組合など)に申請すれば、自己負担額は最高で8万7430円。先の30万円との差額が戻ってくる(所得区分が「一般」の場合。「上位所得者」の負担額上限は異なる。以下の計算式参照)。しかも直近12カ月間で3回の支給を受けると、4回目以降はさらに引き下げられる。また、医療費が高額になりそうなときは、事前に「限度額適用認定証」を病院に提示してから診療を受ければ、還付請求が不要で、窓口では最初から限度額の支払いで済む。
保険医療に詳しいファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんは「この制度を知らない人は意外に多い。必要な医療のほとんどが高額療養費制度の対象になるので、民間の医療保険に入るなら、本当に必要か内容をよく吟味して」とアドバイスする。
ただ、高額療養費制度は希望によるサービスである「差額ベッド代」などは対象外なので注意が必要だ。 ところで、そもそもサラリーマンには、加入している健保組合が個人負担の上限額を決めている場合も多い。「現在は上限が3万円前後の健保組合もある。100万円の医療費がかかっても、実際の負担は3万円で済むのだから、会社を辞めないことが何よりも大事ですね」(内藤さん)。
この人に聞きました
ファイナンシャルプランナー。ファイナンシャル・プランニングサービス「生活設計塾クルー」取締役。保険や保障設計、家計のリスク管理を得意とする。「日本の医療を守る市民の会」を主宰。『医療保険は入ってはいけない![新版]』(ダイヤモンド社)など著書多数。
(ライター 船木麻里)
[日経ヘルス・フォーメン2012年春号の記事を基に再構成]
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