働き方・学び方

定年世代 奮闘記

クマの生態研究 学生に交じりウロウロ 熟年クマガール雑記

2012/6/2

この5月初め、芽吹き始めた栃木県足尾の山中で、ツキノワグマの捕獲調査に加わった。知り合いの東京農工大大学院生から誘いのメールが来たのは、前日の夕刻。翌朝5時に現地集合だという。いつもながら、調査の日取りが決まるのは唐突で、アワを食ってしまう。

■「またいじゃダメ」敬愛されるべき存在

麻酔で眠るクマの体脂肪や血液などを調べる(栃木県足尾町)

クマを生け捕りにするには、山奥にドラム缶を2個つなげて作ったオリを置き、中に好物のハチミツを入れておびき寄せる。運よくワナにかかり、見回りをする地元の自然愛好家などから通報があれば、研究者や学生たちは大急ぎで飛んで行かなくてはならない。

徹夜で車を駆って夜明けと同時に到着したのは、わたらせ渓谷鉄道の終点「間藤」駅にほど近い山間。ここから先、一般車両は入れないため、許可を取った車に乗り換え、さらに徒歩で斜面を下ると、目指すオリがあった。こわごわのぞくと、黒い塊が窮屈そうにガサゴソと動いている。

とびら越しに吹き矢でクマに麻酔を打つのは、調査を取り仕切る茨城県自然博物館首席学芸員の山崎晃司さんだ。「今年最初の捕獲なので、まだ調子が……」と言いながら、「ビュッ」と一吹き、左肩に命中させた。引き出された若いオスが放つ強烈なケモノ臭は、何度嗅(か)いでも頭がクラクラする。

ドラム缶のワナにかかったクマに吹き矢で麻酔をかける(栃木県足尾町)

学生たちは「2歳ぐらいかな」などと言いながら、体重を測ったり、採血をしたりとテキパキ作業をこなしていく。体脂肪測定用のシールを貼るため、足先の毛を丸く剃り取る学生もいる。尿などで汚れた毛を女子学生が黙々とまさぐっているのは、ダニを取るためだ。どんなダニが付いているかも、貴重な情報なのだという。

初参加の学生がうっかりクマをまたごうとすると、先輩学生から「またいじゃダメ」と声が飛んだ。クマは敬愛されるべき存在なのだ。その一方で、年齢を調べるために歯を引っこ抜いたり、全地球測位システム(GPS)の発信機が付いた重い首輪をはめたりといった「迷惑行為」も容赦なくおこなう。荒っぽい作業を見ながら、なんだかクマに同情したくなった。抜いた歯は、生活にほとんど影響のない小さなものだと後で聞いて、少し安心はしたが。

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