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夕立と「ゲリラ豪雨」はどこが違う? 気象予報士 伊藤みゆき

2012/8/29

台風の影響で、激しい雨の中を急いで歩く人たち

今年のお盆休みは、初めと終わりに局地的な大雨や大雷雨に見舞われました。近畿地方を中心に広範囲の浸水や、落雷で命を落とす事故が発生。交通機関にも影響が出て、テレビなどは「お盆に直撃した“ゲリラ豪雨”」として大々的に報じました。

近年はすっかり一般化してきたこの“ゲリラ豪雨”、実は気象庁の予報用語ではありません。とてもあいまいな言葉なのです。よく「夕立とゲリラ豪雨の違いって何なの?」と聞かれることがあるのですが、そもそもゲリラ豪雨という言葉自体が定義されていない以上、答えるのがとても難しいところです。

一般に広まるようになったのは、2008年に年末恒例の『新語・流行語大賞』にノミネートされたことからでしょう。2008年は7月下旬から8月にかけて局地的な大雨により、全国各地で大きな災害が発生した年でした。

記録的大雨だった2008年8月。図は8月29日に記録した1時間あたりの降水量

この年7月には北陸や近畿で大規模な冠水や浸水が発生、神戸の都賀川は一気に増水し児童を含む5名が亡くなる事故が起こりました。東京でも大雷雨によってオリンピック男子サッカーの壮行試合が後半39分で打ち切りという異例の措置がとられました。8月に入っても大規模な災害が続きました。8月5日には東京豊島区でマンホール内にいた作業員が突然の豪雨で流される事故が発生。この時間帯に同じ豊島区のサンシャイン60で仕事をしていた私は、急にビル全体が洗車機の中に入ったように視界が水の壁で隔てられ、雷でビルが揺れたことを鮮明に覚えています。愛知県岡崎市では8月29日未明、1時間に146.5ミリを観測し、一時、市内全世帯に避難勧告が出されるなど、こうして振り返ってみても枚挙に暇がないほど、災害が多く発生したのです。

この頃から“ゲリラ豪雨”という表現が多く使われ始めたように思います。ゲリラという言葉を辞書で調べると、「スペイン語で、小戦争の意。敵の後方や敵中を奇襲して混乱させる小部隊」とあります。その語源からも分かるように、前線や台風など「激しい雨の要因」が天気図上で予想されている時に使うのはふさわしくないと判断されることが多々あります。

とはいえ、2008年のように前線による大雨が予想されていたとしても、その雨が想定以上だった場合に、民間の気象会社や報道各社が積極的に“ゲリラ豪雨”という言葉を使ったことで、市民権を得ました。

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