行楽時の日差しは紫外線対策だけではNG、帽子や日傘で赤外線対策を
日経ヘルス編集長 藤井省吾の「健康時評」
肌の老化を進める因子として、紫外線の影響が大きいことがわかってからすでに20年以上が経つ。紫外線が単なる赤くて痛い日焼け(サンバーン)を作るのみならず、長期的に無防備に紫外線に当たり続けると光老化という現象によりシワやシミが増えることが、今では広く知られるようになった。
男女を問わず、旅行や行楽、ゴルフなどのときには、日焼け止め(サンスクリーン)で、紫外線対策をする人が増えた。SPF50+、PA+++などの表示で紫外線の幅広い波長を大幅にカットする日焼け止めなら肌の守りは万全と、考えれてきた。ところが、新たに「赤外線」や「大気の汚染」も肌の老化を促進することがわかってきた。
若い肌を徹底的に守るためには、さらなる工夫が必要だ。
■日差しの暖かさ=赤外線が、肌の老化を促進
肌の老化を進めるとわかってきたのは、太陽光線が含む、赤外線A波という波長。赤外線の中では、比較的波長が短いもので、医療機器などが出す遠赤外線とは別。
肌に対する光の影響に詳しい神戸大学医学部の市橋正光名誉教授によると、太陽光が当たって、肌に熱感があれば、この赤外線が当たっている証拠。「皮膚に当たると活性酸素を発生させて、真皮の弾力を保つ線維組織のコラーゲンやエラスチンを切断する酵素の活性を高める。実際に赤外線A波の照射でコラーゲンなどが減少することも明らかになっている」と市橋名誉教授はいう。
赤外線A波は、一般的な日焼け止めでは防げない。行楽時やスポーツ時に日差しが熱いと感じたら、帽子や日傘などで、顔に直接当たるのをカットして赤外線A波が長時間当たり続けないよう対策をしたい。
また、「紫外線同様に、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質で害を抑えられることもわかっている」と市橋名誉教授。日差しに当たったあとに、フルーツなどの栄養補給をするのも有効なようだ。
■自動車排気ガスの微粒子がシミを濃くするというデータも
大気汚染が、肌の老化の引き金を引くということも知られるようになってきた。最近、注目されているのがドイツで行われた研究。幹線道路の近くに住む女性と、農村部の女性を比べると、白人の場合、幹線道路の近くの方が1.9倍シミが多いことがわかった。
環境が与える皮膚の変化に詳しい名古屋市立大学大学院の森田明理教授によると、排気ガスが含む微粒子が毛穴から肌の細胞に入る。その微粒子が含む多環芳香族単価が、肌の細胞の受容体に結合し、シミのもとメラニン色素を増やすのだという。
その対策として、多環芳香族単価水素の害をなくすために、帰宅後に丁寧に顔を洗うといいという。
旅行や行楽の季節。日焼け止めによる紫外線対策に加えて、帽子、日傘で赤外線対策を。さらに、車の多い場所を出歩いたときには、帰宅後の丁寧な洗顔を行うのが、肌を老化させない良策といえそうだ。
日経ヘルス編集長。東京大学大学院(農学系)を修了。1991年に医師向けの専門雑誌『日経メディカル』の記者として取材をスタート、98年からの『日経ヘルス』記者生活でも、医学と科学をベースに取材・編集を担当。08年から現職。
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。