室膀核が発するあくび指令シグナルは、脳のいろいろな部位に届く。多数の部位を同時に働かせることで、「あくび」という複合的な動作が成立する。なかなか複雑なのだ。

このときに脳波を測定すると、β波に代表される覚醒時の脳波が観察される。

「あくびが体に与える作用として確実にわかっているのは、この覚醒作用です」

有田さんによると、あくびが出やすいのは、覚醒と睡眠の境界から覚醒に向かうときだという。例えば朝のあくびは、体を睡眠から覚醒へ誘導する。夜のあくびは、眠いときに目を覚まそうと頑張っている姿といえる。

「夜の運転中は、よくあくびが出るでしょう? あれは、寝てはいけないと思っているから、出るのです。だから、退屈な講義や会議であくびが出るのは、起きようとする気持ちの表れ。ほめるべき行動です」

一方、ストレスなどで過度に緊張したときにも、あくびが出やすい。これは、緊張をゆるめることで覚醒を促す行動と考えられる。「昔の将棋の名人で、大事な一手を指す前に必ずあくびをする人がいました。あくびで頭がさえることを、体が知っていたのでしょうね」

あくびの起源は性行動?

ここで有田さんの口から、気になる一言が出てきた。

「もっとも覚醒だけなら、あくびの真似をして手足を伸ばすだけでも、ある程度効果があるのですよ。ストレッチで筋肉を伸ばせばスッキリするでしょ」

確かに。でもあくびの心地よさは、普通のストレッチとは違う。では、あくびって結局何なのだろう? と、有田さんはおもむろにこんな話を始めた。

「室傍核からあくび指令を発するのはオキシトシン神経ですが、このとき同時に男性では勃起を誘導します。つまり、性行動と関連がある神経なのです」

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