電動自転車2強対決 自然なアシストでヤマハに軍配
新生活シーズンを迎え、新たな環境で通学や通勤を始めている人も多いだろう。そこで今回は、需要が増えている電動アシスト自転車を取り上げる。
電動アシスト自転車は2011年に年間約41万台を出荷。自転車全体の出荷台数の1割強に達し、二輪車(バイク)の販売台数を上回る。
今回対決するのは、電動アシスト自転車のシェアトップであるパナソニック サイクルテックの「ビビ・DX」(2012年12月発売)と、2位につけるヤマハ発動機の「PAS ナチュラL デラックス」(2013年3月発売)だ。
新センサー採用で自然な走り
まず、基本性能の違いをチェックしよう。パナソニックのビビ・DXは8.9Ahのリチウム(Li)イオンバッテリーを採用。対してヤマハのPAS ナチュラL デラックスは、8.7Ahを採用する。今回テストした車両はどちらもタイヤ径が26インチで、車両重量はヤマハが1kg軽い。もっとも、使用時にバッテリー容量や重さの差を感じることはなく、ほぼ同レベルといっていいだろう。
最も大きな違いはセンサーシステムだ。PAS ナチュラL デラックスは国内初の「トリプルセンサーシステム」を搭載する。従来のトルクセンサー、スピードセンサーに加え、クランク回転センサーを新たに採用した。「より快適な乗り心地を追求した新機能。違和感の少ない、スムーズなアシストを実現するために開発した」(ヤマハ発動機)という。
自転車はペダルの踏み込みによってトルクがかかり加速するが、踏み込み後にどうしてもトルクが抜ける瞬間がある。クランク回転センサーは、その瞬間を自走にならない範囲でアシストする。より自然な走行ができる仕組みだ。
消費カロリーを表示
対するパナソニックのビビ・DXは、トルクセンサーとスピードセンサーの「Wセンサーシステム」を採用。実走行では、踏み込み時のアシストがより強く感じられた。ただし、このあたりは乗り手によって印象に差があるかもしれない。
スイッチ回りの表示機能にも違いがある。パナソニックは、グループ共通の取り組みである「エコナビ」を搭載。ロングモードでの平地走行などで、アシストを休んでいるときに作動する。さらに特徴的なのが、消費カロリー表示。「電動アシスト自転車なら自転車通学・通勤も続けやすい。運動をする動機づけの一つになれば」(パナソニック サイクルテック)との狙いだ。
低速走行時のアシストに不満なし
一方、ヤマハのPAS ナチュラL デラックスは、各モードでの残り走行距離を数字で表示できるため、使用時に安心感を得られるのがいい。
現在の電動アシスト自転車は、2008年の法改正によりアシスト比率がそれまでの2倍に引き上げられている。2モデルとも、坂道などでの低速走行時のアシスト力に不足を感じることはなかった。違いとしては、ヤマハは平地走行中を含めて常に自然なアシストを感じられるのに対し、パナソニックは出足などでアシストをすぐに感じられるパワフルさがあった。
甲乙付け難い2モデルだが、今回は、より自転車らしい自然な乗り心地と各モードでの残り走行距離がわかる安心度でヤマハに優位性を感じた。質感の高いデザイン性も評価できる。
ただし、日頃の運動を兼ねて使うならパナソニックも有力候補。性能が同等のデザインモデルも用意されている。
(デジタル&家電ライター コヤマタカヒロ)
[日経トレンディ2013年6月号の記事を基に再構成]
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