■首こり、片頭痛、耳鳴りなど不調の原因にも
猫背姿勢でパソコン画面を見ようとすると、あごを突き出しますね。すると首の後ろ側が縮まる一方になります。首の後ろには様々な自律神経が通っていますから、圧迫を受けて片頭痛や耳鳴り、かすみ目などの不快な症状が起きます。また、肩が前に出る「巻きこみ肩」の姿勢になり、呼吸が浅くなり、気持ちも滅入ります。本来、肩まわりには腕を前後、上下、斜めに、と自在に動かすのを支える大胸筋や小胸筋がいろいろな方向に走っていますが、これらの筋肉が固まると猫背がさらに強化される。“猫背になるための筋トレ”をしているような皮肉な状態です(笑)。もちろん、胸を張るのがつらくなるからバストも下がる。下の図のように、手を上げて体の左右でひじを肩と同じ高さに上げようとしても、ひじが上がらない。固まった大胸筋や小胸筋が邪魔するからです。
猫背の人は、ブラジャーのベルトを下げたがるという特徴も。前屈みになると背中にベルトが食いこむ感じがするので、つい下げるんですね。実際、女性スタッフに「左右1cmずつ上げてください」と検証してもらうと、気持ち良く胸が張れるようになった、と驚かれますよ。

あごを引くと二重あごになってしまう、首のシワやたるみが気になるという人も、猫背が原因かもしれません。猫背特有のあごを突き出す姿勢は、首の後ろを縮める代わりに、前側を異常に引き伸ばすからです。ゴムと同じで、伸ばされっぱなしでは皮膚も戻る力を失い、たるんでしまいます。
特に、腰まで丸まった、若い人に多い「仙骨座り」も、猫背を悪化させます。イスに座るときに背骨が丸まっていると、連動して腰も丸まり、骨盤の後ろ側の仙骨や尾てい骨で支える座り方になってしまう。本来は、骨盤の下部、座ったときにお尻の下にある、ぐりぐりとした「坐骨結節」を座面につけて体を支えるのが美しい座り方なのですが、背すじを支える腹筋がないと長続きしません。
■こまめに根気強く修正、猫背は治る
姿勢を改善しようと矯正ベルトなどを背中につける人がいますが、こういったものは短時間のトレーニング用。長時間つけるのには向きません。猫背によって胸の大胸筋や小胸筋がガチガチになっているのに、ベルトで無理に胸を反らせると、体は腰を反らせることによって胸を広げようとする。結局、腰が痛くなるだけです。体はひと続きにつながっているから、一部分だけの矯正は故障のもと。それよりも、日々の動作の中でこまめに筋肉を動かせば、確実に体は学習し、筋肉の質も変わっていく。急がば回れ、なのです。