時代が求める前向きな物語

さらに有川作品には、今のご時勢が求めてやまない最大のキーワードがある。決してすんなり進むわけではない、しかし“前向き”なのだ。「僕が有川さんの作品が好きなのは、どれも前向きだから。対象をリスペクトしているのも、気持ちがいい」(三宅監督)。「有川作品に共通しているのは、題材こそ違えど“私はこれが好きなの!”という姿勢」(小出氏)。

ラブコメ度と舞台設定から見る“有川ワールド”の変遷。「べた甘×SF的世界観」から「甘さ控えめ×現実社会の問題」まで、デビュー10年で、有川の作品世界がどう拡大したのかを図化した

読者を無理なく物語世界に誘う筆致と、爽快な読後感。その2点がブレないからこそ、入り口こそ様々だが皆“有川ファン”に転じ、読み漁る。結果、年齢層や性別を問わずに実に幅広い読者から支持される作家となっているのだ。

「有川先生はプロデューサー的思考を持ち合わせており、(作品の映像化に際して)プロジェクトの一員としての成功意識が高い」と重松氏に言わしめた有川。そして特撮・VFX・肉体すべてを駆使する佐藤監督が、「映画に対する挑戦、力いっぱいやりたいと思わされた」とその底力や映像化への夢を語った作品『図書館戦争』──。最もファンが多いであろう同作の実写映画化を機に、作家・有川浩の人気がさらに一段上がるのは、間違いなさそうだ。(文中敬称略)

(ライター 土田みき、日経エンタテインメント! 平島綾子)

[日経エンタテインメント! 2013年5月号の記事を基に再構成]

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