一般的な認知度が高まるにつれ、常に原作を求める映画やテレビからのアプローチも必然的に増えていく。09年発売の『フリーター、家を買う。』は、翌年に二宮和也主演でドラマ化。有川にとっては初の実写映像化となり、高視聴率をマークした上、数々のドラマ賞を受賞。この影響で原作も累計発行部数43万部まで伸びた。

実写映像化が読者拡大に寄与するのは、何も有川作品に限ったことではない。しかし『図書館戦争』の熱狂的な人気で、ともすればミリタリー・ラブコメに偏ったイメージを持たれがちだった有川を、もっと広い意味でのエンタテインメント作家として印象づけし直した。その意味でも、実写化の果たした役割は大きかったといえる。

有川作品の実写化に初めて手を挙げたのは、11年4月に中谷美紀主演で公開された映画『阪急電車片道15分の奇跡』、そして『県庁おもてなし課』も手がける関西テレビの重松圭一プロデューサーだ。重松氏はその魅力について「一気に読まされて、読み終えると『あの役は誰で…』とキャスティングが浮かぶ。プロデューサー魂をそそられる物語力がある」と語る。

映像界も注目の「読みやすさ」

物語の力については、『図書館戦争』主演の岡田准一、『県庁おもてなし課』主演の錦戸亮も口をそろえるのが、圧倒的な「読みやすさ」だ。『図書館戦争』は言論の自由など小難しいテーマの上に成り立ち、『県庁おもてなし課』は地方活性化、前出の『フリーター、家を買う。』はニートやうつなど社会的な重いテーマを抱える。にもかかわらず「読みやすい」理由は、独特の物語展開にある。

例えば登場人物の2人が何かで対立するシーン。一般的な小説では片方(通常は主人公)の考えや目線しか明かされないが、有川作品ではもう一方の思いも明らかにする。『図書館戦争』で主人公の郁に指導教官の堂上が厳しく当たるが、郁の心情だけでなく堂上の真意を同期の小牧に代弁させる、といったように。そのため読者は、登場人物の思惑や感覚をしっかり把握し、読み進めていける。小出氏が、「本を読み慣れない人でもストレスなく読めるのが、有川作品が優秀なエンタテインメント小説たる証拠」と指摘する所以だ。

『阪急電車』『県庁おもてなし課』の関西テレビ三宅喜重監督は、「有川さんの小説はとても映像的なところがある。読者の経験値を踏まえているというか、執筆時に頭の中で、既に絵が見えているんだと思う」と言う。

どのタイトルも等しく分かりやすいという信頼感は読者にも確実に伝わっている。『三匹のおっさん』の40代50代男性読者が『図書館戦争』を文庫化のタイミングで買ったり、ドラマ『フリーター、家を買う。』で知った40代女性が「自衛隊三部作」に手を出すなど、読者の多くがテーマ性の違いを超えて“有川ワールド”を楽しんでいるのは購入傾向からも明らかだ。

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