『図書館戦争』シリーズは多メディア展開が進んでいる。白泉社刊のコミックは既刊10巻で累計200万部(第11巻が4月5日発売)。また、08年のテレビアニメ化から4年ぶりに続編が映画化された『図書館戦争 革命のつばさ』は10代20代を中心に集客。(C)『図書館戦争 革命のつばさ』(ブルーレイ&DVD発売中/発売・販売:角川書店)、(C)有川浩・角川書店/図書館戦争フィルムパートナーズ 2012

ここでポイントなのは、ラブコメの部分で若い女性ファンをがっちりつかんだ点である。「実は王道のラブコメは、作家は意外と書かないものなんです」とは前出の小出氏。確かに、王者・東野圭吾に始まり、ここ数年人気で有川と併読率が高い湊かなえや『ビブリア古書堂』シリーズの三上延らはミステリー作家。王道とはその言葉通り“万人受け”を表す。みんな好きなのにプロの書き手が少ないラブコメに真正面から取り組み、このジャンルでは唯一無二の作家となった。

その後有川が今の地位を築くまでには、大きく2回の飛躍があった。08年の第1次ブレイクの発端は06年、代表作『図書館戦争』シリーズの誕生だ。「メディア良化法」による言論弾圧に対峙すべく立ち上がった図書館による防衛組織・図書隊の笠原郁。彼女の成長と恋愛を追いながら、本を守るべく懸命に戦う仲間の姿を描く。

『図書館戦争』は、有川の得意技である「ミリタリー×ラブコメ」の究極ともいえる作品。「戦いと日常という、まるで水と油のように性質が異なるものを絶妙に交えているところがなんとも魅力的。両方あるからこその『図書館戦争』で、映像化でもその両立は守りたいと思った」(実写映画の佐藤信介監督)。まずはコアファンの20代女性層でヒット、広まりを見せていく。

その人気が爆発するのが、アニメ&コミックと多メディア展開が始まった08年。特にアニメ化の効果は絶大で、原作へ流入するファンも急増。発売から2年たっていたハードカバーの売り上げが出版取次の日販の実売記録(WIN+を利用)で前年比約4.2倍を記録するなど、この初映像化の成功が、20代をはじめとする男性層に読者を広げる契機となった。

『阪急電車』など日常路線が加わり一般受け

10~11年にかけての第2次ブレイクは、テーマ性の枠が広がったことが大きい。その第一歩が、08年発売の『阪急電車』だ。関西に実在する鉄道のローカル線を舞台に、乗り合わせた人々の恋愛的エピソードを描いた現代小説で、ミリタリー色は一切なし。映画化の影響もあって関西圏や40代の男女の支持を集め、累計発行部数126万部(本記事中の累計発行部数は13年3月時点、以下同じ)をたたき出した。

その後も日常的な作品を次々に発表。『別冊文藝春秋』に連載された『三匹のおっさん』(09年)で50代男性ファンを新たに開拓し累計76.7万部(文庫、続編も含む)。ラブコメ路線を極めた『植物図鑑』(09年)では、従来の20代女性に加え30代40代も虜にするなど広い世代の女性読者の心を鷲づかみにして書籍19万部、文庫33万部と、新たな読者層を拡大していった。

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映像界も注目の「読みやすさ」
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