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新しい主婦「ハウスワイフ2.0」という生き方

著者、エミリー・マッチャーさんに聞く

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NIKKEI STYLE

 努力して働き、多く稼ぐことを善だと考えてきた米国でいま、そうした価値観と一線を画す女性が増えている。会社を辞め、子育てや料理に時間を割きながら、ブログで情報発信し、手作りの品をネット販売する彼女らの姿は、伝統的な専業主婦や「玉のこし」とは全く異なる。その新しい主婦像についてまとめた「ハウスワイフ2.0」の著者、エミリー・マッチャーさんに話を聞いた。

――新しいタイプの主婦「ハウスワイフ2.0」とは何か。

「男性主導の伝統的な企業社会に組み込まれて、忙しく仕事に追われる生き方ではなく、家庭での家族との時間、自らの手で何かを作る時間を大切にしながら、サステイナブル(持続可能)な時間の使い方をする人だ。インターネットを使い、ブログで発信することも大きな特徴だ」

――伝統的な専業主婦との違いはソーシャルメディアを活用するかどうかという点か。

「それは大きな要素ではある。そもそも1950年代の主婦はハウスワイフ2.0とは異なり、選択肢がなかった。ネットも情報も無いまま、料理や掃除といった家事を強いられていた。本人たちはそれを楽しいと思っていなかったかもしれない」

「しかしハウスワイフ2.0は、自らの価値観に基づいて、家庭や何かを手作りすることに多くの時間を使う道を選んだ。ネットやソーシャルメディアのおかげで、他の人々とつながり、孤立しないで様々なことに取り組める」

――IT(情報技術)の知識がないとハウスワイフ2.0にはなれないのか。

「そういう側面は多少あるかもしれない。著書『ハウスワイフ2.0』を書く際、約200人の女性を取材した。彼女らの大半は大学卒で、全員がネットを使いこなす。伝統的な専業主婦とはまったく違う新しいタイプの主婦で、革命的な主婦のあり方だといえる。伝統的な専業主婦は社会の中で孤立していることが多かった。家事の経験やノウハウがあっても、それを他の人とシェアすることも難しかった」

――「私は高等教育を受けていない、ネットも使えない」という女性がハウスワイフ2.0になるにはどうすればいいのか。

「ハウスワイフ2.0の重要な要素は、経験やノウハウ、そして生み出したものをシェア(共有)することだ。たとえコンピューターを使えず、ネットにつながっていなくても、地域や社会の様々なコミュニティー(共同体)活動に参加することで、シェアできる。その意味では、どんな女性でもハウスワイフ2.0になれる。女性だけでなく、男性もそういう生き方を選ぶことができる」

――日本は保育所が足りないなど、女性が働く上での環境整備が途上で、ハウスワイフ2.0以前の状況といえる。

「米国でも、家族との時間を大切にし、料理や掃除、モノの手作りなどにこだわるという生き方に対し企業文化は優しくなかった。伝統的な企業文化は、頑張って人の上に立つことを女性にも求めたが、ワークライフバランスを追求するためにそうした伝統的な企業文化と決別した女性たちが、ハウスワイフ2.0となった。日本でも女性たちがもっとワークライフバランスを追求していけば、ハウスワイフ2.0が登場するかもしれない」

――米国ではIBMやゼネラル・モーターズ(GM)など大手企業で女性の経営トップが誕生したが、女性の昇進や社会的な成功を阻む「ガラスの天井」は厚いと思うか。

「とても厚いと思う。あらゆる産業、企業のトップは今も大半が男性だ。いくつかの会社でガラスの天井を突破した個人が登場したからといって、天井全体が破れたわけではない。女性が家庭を大切にしようとするとき、いまの企業の文化はそれを阻害しようとする。今後は女性だけでなく、家庭を大切にしようとする男性の間でも、そうした伝統的な企業文化に反旗を翻し、企業社会から抜け出してハウスワイフ2.0のような生き方を選ぶ人が増えてくると思う」

――米国では次の大統領の有力候補となるのはヒラリー・クリントン氏ではないかという見方もある。もしヒラリー・クリントン氏が大統領になったら、ガラスの天井はなくなると思うか。

「残念ながら、そうは思わない。女性の大統領が登場するのは素晴らしいことだが、すべての女性にとって天井がなくなることにはならないと思う。オバマ氏が大統領になったとき、人種差別問題が解決に向かうとの期待が高まったが、残念ながら米国には今なお人種差別が根強く残っているのが実情だ」

――本の執筆に際して取材した200人は、ガラスの天井を破ることをあえてせずにハウスワイフ2.0という道を選んだのか。それとも、天井を破ろうとしたができなかったのか。

「両方のタイプがいる。ガラスの天井を破ろうと努力して疲弊した母親世代を見て育ち、それとは違う生き方をしたいとハウスワイフ2.0を選んだ人もいるし、ガラスの天井を破ろうとして挫折した人もいる」

――資本主義的な価値観では、人を評価するポイントはいかに多く稼ぎ、成長するかだ。ハウスワイフ2.0の登場は、米国における個人の成長に対する考え方が変わってきたことを反映しているのか。

「反映していると思う。近年、従来の『もっと働き、もっと稼げ』という価値観に対して多くの疑問がつきつけられた。一生懸命働いて稼いだのに、それがあっけなく崩れ去った金融危機を見せつけられたほか、地球環境悪化の問題も依然として大きな懸念として存在している。そんな中で、親世代の働き方、物質主義的な生き方を幸福ととらえない人が増えている。『頑張ってもっと稼ぎ、もっと得る』のではなく、『今あるもので満足しよう』という考え方だ」

――経済成長の停滞が長く続いた日本では、「量的な成長」を最初から選択肢として考えない若者も多い。ハウスワイフ2.0の登場もそうした背景と関係があるか。

「米国と日本では環境や背景が違うかもしれないが、バブル経済が崩壊し『伝統的な価値観の延長で頑張ってもその先に安泰はない』という価値観が台頭するようになったことは大きな共通点なのではないか」

――ハウスワイフ2.0を選ぶことと、経済的に豊かな男性と結婚することとは関係があるか。

「ハウスワイフ2.0は結婚相手の経済力とは全く関係ない。これは女性自身の生き方の問題だ。決して楽をしようというのではない。時には企業社会で生きるよりも厳しいことがある」

――日本でも、企業社会のなかでバリバリ働く女性が現在たくさんいる。そういう生き方をどう評価するか。

「キャリアを求めて頑張る女性もいていいと思う。ハウスワイフ2.0はそうした価値観とは異なる生き方だが、これは女性だけに限らない。男性もあてはまることだ。企業社会の価値観とは違う選択肢を持つかどうかということだ」

――米国でのハウスワイフ2.0増加に宗教的な価値観は影響しているか。

「興味深い点だ。リベラルな考え方の人たちと、保守的なキリスト教の背景をもつ人々がいるが、どちらにもハウスワイフ2.0という生き方を選択した人がいる。そして彼女たちはみな家族と過ごす時間を大切にし、有機栽培した食品を重視し、環境を守る活動に力を入れている」

――相反する価値観をもったグループの対話にも役立っているということか。

「ハウスワイフ2.0が受け入れられる背景にはまさにそれがある。ハウスワイフ2.0が提起している問題は普遍的といえる。日本でも米国でも、子育てや環境問題、食の安全など共通する問題は多い。日本でも今後はハウスワイフ2.0という生き方を選ぶ人が増えると思う」

――もし経済が行き詰まっておらず、高度成長の渦中にあるような国に生まれていたとしても、ハウスワイフ2.0を選んだか。

「選んだと思う。なぜなら、経済が急成長している社会に生きていたとしても、課題は変わらないからだ。子育ての問題があり、家族と過ごす時間の問題もある。環境問題も、食の安全も……課題は変わらない」

――もしそうした課題が解決されたら、どうか。

「企業が驚くほど姿勢を転換し、家庭を重視する従業員に優しくなったとしたら、それはすばらしいことだ。過去にもそういう社会への期待が高まった時期があったが、現実にはそうならなかった」

「仮にすべての課題が解決した理想的な社会が登場したとしても、私はハウスワイフ2.0を選ぶだろう。料理をしたいし、家で家族と一緒の時間を過ごしたい。会社に縛られずに、自由で柔軟な働き方がしたい。それは価値観の問題なのだと思う」

(岸田幸子)

 エミリー・マッチャーさん 米ノースカロライナ州チャペルヒル出身、ハーバード大卒。不況の影響で、大学卒業後は地元ノースカロライナ大の研究室に就職したが、離職。現在はジャーナリストとして仕事をしながら、「ハウスワイフ2.0」生活を楽しんでいる。31歳。

ハウスワイフ2.0

著者:エミリー マッチャー
出版:文藝春秋
価格:1,680円(税込み)

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