最高のスパイスを探して食を愉しむ旅(4)ナショナル ジオグラフィック日本版

~レユニオン島(フランス海外県)・マダガスカル バニラの甘い夢~

収穫されたバニラビーンズは3~4週間、天日で乾燥させた後、大きさや質によって等級ごとに分ける。(C) Olivier Cirendini/Lonely Planet Images

1841年、12歳の少年が人工的な受粉方法を発見した。これによって、えもいわれぬ甘い香りを放つバニラは世界中に広がった。

少年の名前はエドモンド・アルビウス。熱帯の島レユニオンの奴隷だったエドモンドは、バニラの花を人工的に授粉させる簡単な方法を見つけた。これでバニラの商業栽培が初めて可能になり、西インド洋の島々にバニラブームが巻き起こった。それから170年近くたった今も、バニラはレユニオン島やマダガスカル、コモロ諸島の代表的な食材で、主要な輸出品ともなっている。

「このあたりの島々の気温と湿度は、バニラ栽培に理想的です」と、レユニオン島のバニラ農業協同組合の組合長フランソワ・メイエ氏は説明する。「生産量だけでいえば、レユニオン島はマダガスカルやコモロと比べて特に多いわけではありません。しかし、品質は最高だと自負しています。それに、状況に応じた栽培の技術や秘訣はみんな、レユニオン島から世界各地へと広がったんですよ」。

レユニオン島のバニラ農協では、ブラス・パノン村近くにある農園で、バニラ栽培の歴史や実際の作業工程の展示を行っている。バニラの大半はヨーロッパに輸出されるが、島の人々も自分たちの分はちゃんと確保している。

レユニオン島のクレオール料理のレストランに足を運べば、鶏やカモ肉を使ったラ・バニーユ、信じられないほどおいしいバニラアイスクリームやクレープ、ラムパンチを楽しめること請け合いだ。

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ベストシーズン  バニラの栽培時期は6~12月。収穫期にはさや(バニラビーンズ)を刈り取ってかごに集め、農園内の工場で乾燥させる。

旅のヒント レユニオン島、マダガスカル、コモロ諸島など一帯のバニラ栽培地をめぐるには、2週間は必要。1つの島に限るなら2~3日で十分だろう。いいレストランはアンタナナリボ(マダガスカル)とサンドニ(レユニオン島)にある。サンドニではバニラを使ったさまざまな地元料理のレシピを紹介する本を売っているので、帰宅してから試してみるのもいい。

【見どころと楽しみ】
<バニラシュガー>
砂糖をバニラで風味づけしたバニラシュガーは、いろいろなレシピに使えて便利。いちごや、朝のポリッジにふりかけてもおいしい。
・砂糖 450グラム
・バニラビーンズ 2本
気密性の高い容器に砂糖を入れる。バニラビーンズを縦に半分に切り、種をしごき出して砂糖に入れる。よく混ぜてバニラを砂糖の中に沈めてから、蓋をして容器を完全に密閉する。
2日もすれば、砂糖にはバニラの風味がしみ込んでいるはず。普通の砂糖のように使えばよい。数カ月間は保存がきき、バニラの香りがなくなるまで、使うたびに砂糖を足していく。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[『一生に一度だけの旅 世界の食を愉しむ BEST500』の記事を基に再構成]

『一生に一度だけの旅 世界の食を愉しむ BEST500』(日経ナショナル ジオグラフィック社、7800円[コンパクト版は2940円])では、活気あふれる市場から、高級レストラン、見事なぶどう畑や幻の香辛料、熟練の技を継ぐ醸造所、農家の台所まで、世界各国の食文化を巡る旅を紹介している。 http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/shop/detail.php?id=264
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