
初詣では本来、地域の守り神や先祖が眠る菩提寺への新年最初のあいさつだ。寺社や仏教の本を数多く手掛けてきた文筆家の田中治郎さんは「江戸時代には、新年の歳神様が宿る方角(恵方)の寺社に詣でることが流行しました。エンターテインメントとして人気を集めたこの流行が、有名寺社への初詣につながったようです」と言う。
初詣が一般化したのは明治以降、夜中に大挙して初詣に行くようになったのは電車の終夜運転が始まった1950年代以降。まだ新しい習慣なのだ。
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■~いつ、どこに詣でるか~
【寺に詣でるか神社か】
○神社でも寺でもよい
×初詣は神社に行くべき
神様のいる神社で1年の平穏無事を祈願しても、仏様(ご本尊)のいる寺で祈願してもよい。「日本は大陸から伝わった仏教を古来の神道と融合させ、八百万の神は人々を救うために現れた仏の仮の姿として受け入れてきました」(田中さん)。寺社を選ばず参拝する習慣も日本独自の神仏習合がベースで、どちらに詣でてもよい。
【詣でる寺社の選び方】
○まずは氏神や菩提寺に詣でる
×有名寺社のほうがご利益が大きい
神社の信仰は、神社がある各地域を基盤としている。「初詣でも地域の守り神である氏神様にお参りするのが基本です」(神社本庁 広報センターの瀬尾芳也さん)。まずは地域の氏神(家の近くの神社)にお参りし、有名な神社仏閣に詣でたいなら、その後に行く。寺も菩提寺(自分の家が檀家となっている寺。檀那寺)があるなら、まずそこに詣でよう。
【詣でる時間帯】
○時間に決まりはない
△午前0時に詣でるべき
何時に詣でてもよい。「大みそかの深夜から年明けにかけての参拝は、二年参りといってより功徳が積める」ともいわれる。だが、深夜の初詣では1950年代まではそれほど一般的ではなかった。大みそかの夜は歳神様の訪れを家で待ち、元旦に神様とともに雑煮を食べた後、詣でるのが習わしだった。