これまで、妊産婦さんを中心に数多くの女性の体を見てきましたが、ここ3~4年の女性の体のゆがみの加速には、すさまじいものがあります。
私は助産師向けに全国でセミナーを行っていますが、受講者には毎回のように「今、体のどこがつらいですか?」と質問します。10年くらい前は「腰痛」が7割で「首こり」が3割でしたが、年々、腰痛の比率が減り、3年前には首こりが7割、と逆転。そしてとうとう2012年は、腰痛はごくわずかで首こりを訴える人が98%と圧倒的多数になったのです。とはいえ、腰痛が改善されたわけではありません。人間の体は最もつらい個所に意識を集中させるようにできている。2番目、3番目の痛みは感じにくいのです。あるはずの腰痛を覆い隠してしまうくらい、首の凝りが悪化しているのです。
3年間で首こりを悪化させた最たる原因は「スマホ姿勢」だと私は思っています。
首の凝りが副交感神経の働きを邪魔
これまで悪いとしてきた「パソコン姿勢」は、まだ腕や上体を動かす余地があったからましだったのです。けれどもスマホ姿勢では、目はおろか、顔さえ動かさず、動いているのは人差し指1本だけ! このような姿勢でいると、頭蓋骨と首の骨(頸椎)の境目である「後頭窩(こうとうか)」、いわゆる“盆の窪(くぼ)”といわれる個所ががちがちに固まってしまいます。
一点を凝視するスマホ姿勢は、うつむくことによって頭と首の境目の「後頭窩」が広がり、そのゆがみは骨盤にも連動する。また、骨盤を後傾させる「仙骨座り」により、腰椎や骨盤のゆがみはさらに定着しやすくなる。
首の後ろの「僧帽筋(そうぼうきん)」や「頸板状筋(けいばんじょうきん)」、背骨に沿う「脊柱起立筋(せきちゅう きりつきん)」といった筋肉は、前に傾いた頭によってパーンと引き伸ばされ「これ以上引っ張らないで~」と悲鳴を上げます。これらの筋肉は、頭が真っすぐ乗っていてこそ適度に収縮できるもの。強く引っ張られっぱなしになることによって、損傷や炎症を起こし、首を動かせなくなります。
そんな状態であるにもかかわらず何時間もスマホざんまい、最近ではLINE(ライン、チャットなどを楽しむスマホ用アプリ)で“既読スルー”をしてはいけないと、トイレやお風呂にもスマホを持ち込むという人が多いようですね。
さらに問題なのは、神経にまで影響が及ぶことです。
交感神経はストレス時に、副交感神経はリラックス時に優位になる、といわれ「ストレスとの関連が深い」とされています。それはその通りですが、私は「首や腰の凝りやゆがみが、副交感神経の働きを邪魔するのでは?」と考えています。
医学者からそんな見解を聞いたことはないのですが、論より証拠、首の凝りをほぐし頸椎を正す体操をすると、途端に顔のくすみが消え、雪女のように冷え切っていた手がぽかぽかになり、胃もたれや月経痛、頭痛や目の疲れも、楽になるのがわかります。この変化こそ、副交感神経が働きだした証拠なのです。
実際に、スマホで凝り固まる「後頭窩」には、自律神経の一つ、リラックスに関わる副交感神経を代表する「迷走神経」が走っています。後頭窩を通り、首から胸部、腹部のほとんどの内臓をはじめ、皮膚や血管など全身の広いエリアの働きをつかさどる重要な神経です。スマホ姿勢で後頭窩がゆがむと、迷走神経が圧迫されて、その機能が邪魔されるのです。
また、首にゆがみが生じると、体の前後左右などのバランスを保とうとして、骨盤も連動してゆがみます。すると骨盤の中にある重要な副交感神経「骨盤内臓神経」の働きが妨害されます。骨盤内臓神経は、腸、子宮、卵巣などの働きをつかさどっているので大変です。月経不順、便秘のほか、むくみ、冷えなどの不調が一気に悪化してしまいます。