東京駅赤レンガ駅舎が復元、丸の内と八重洲はどうなるクリエイティブディレクター 仲原正治

東京駅構内を歩く

50の店舗が並ぶ「グランスタ」の内部(写真:仲原正治、撮影:2012年9月11日)
東京エキナカ「グランスタ」の看板と「North Court」の入り口(写真:仲原正治、撮影:2012年9月11日)

東京駅は、平日はビジネスマンの出張拠点、休日は旅行客の出発点であり、一日38万人の乗客がいる。東京駅構内は商売の点で、立地の優位性、効率性は圧倒的なものがある。そのため、駅ナカと呼ばれる駅構内では、土産や弁当のショップだけではなく、日本酒やワインのショップ、スイーツ、総菜など、ここで買わなくてもよいようなものまである。構内を歩くと、「ここはデパ地下か」と錯覚してしまうほどだ。

JR東日本は2005年の「エキュート大宮」のオープンから、駅ナカビジネスに本格的に取り組んでいる。品川、立川、日暮里と次々に「エキュート」を誕生させ、2007年には東京駅構内に「グランスタ」(2010年にリニューアルオープン)、2010年には「エキュート東京」をオープンさせている。

「エキュート東京」。東京駅の南側にある(写真:仲原正治、撮影:2012年9月11日)

東京駅の駅ナカのショップは、缶ビール片手に弁当を食べながら旅行に出るというような昔ながらの旅や出張の楽しみだけではなく、老舗の店の弁当やワインを楽しみながらなど、旅の楽しみを倍増させるようなショップ構成が施されている。ただ、筆者は旅に出る場合、ほとんどの店が開店していない早朝に東京駅を出発することが多く、買い物をすることは少ない。弁当を買うよりも手作りのおにぎりと麦茶を片手に旅に出るというのが定番である。東京でお金を使うのではなく、旅先でぜいたくをするのを基本としているからだ。

商業施設という点では、赤煉瓦駅舎内の東京ステーションホテルもリニューアルされ、10月3日にオープンする。以前は出張前や出張帰りに会議をすることができて非常に便利だったし、宿泊料もリーズナブルだった。今回の改装で、ホテルの延べ床面積は約2万m2となり、部屋数も150室になるが、宿泊料は一泊2万5000円以上になる。ウエディング機能もある高級志向のホテルへと衣替えしているようだ。

東京駅北口のドーム(写真:仲原正治、撮影:2012年9月11日)
日本赤煉瓦建築番付。東京駅は東の横綱だ(資料:赤煉瓦ネットワーク)

日本は戦後67年を経過した。建物や公共施設の老朽化が激しくなり、新しいものを建設していくのか、あるいは古いビルを再生していくのか、を選択する時期になっている。そして、2011年の東日本大震災と原子力発電所の事故は、これからの生き方や生活の質や豊かさをもう一度問い直す機会を与えた。日本は今、大きな転換期を迎えているのだ。

東京駅周辺は日本一のビジネス街であり、古いビルが経済性、効率性の高い新しい超高層ビルに建て変わっていくことが予想される。そうした中で、東京駅赤煉瓦駅舎の復元は砂漠の中のオアシスのような存在でしかないのかもしれない――。ただ、この一つを残すことが大切なのだと思う。次の「まちづくり」につながるきっかけとなることだけは確かだからだ。

筆者の所属する「赤煉瓦ネットワーク」では2000年に「全国赤煉瓦番付」を発表した。そのときピックアップした建物も、この10年余で相当数が取り壊しになった。地域とともに100年近くを過ごしてきた愛すべき建物をその地域の特性に応じて保存活用し、コミュニケーション豊かな社会の再生を行っていく。そうした社会が実現できるように願っている。

仲原正治(なかはら・まさはる)
1949年東京生まれ。1974年東北大学法学部卒業。横浜市職員として福祉、都市再開発、横浜美術館、赤レンガ倉庫の開発(みなとみらい21)に従事し、2004年からはクリエイティブシティの専門家として中心的な役割を担ってきた。2012年5月に横浜市を退職し、クリエイティブ・ディレクターとして独立。文化芸術によるまちづくりの支援や創造都市のネットワークを活用した仕事を進めている。現在、赤煉瓦ネットワーク運営委員、石巻「日和アートセンター」運営アドバイザー、MZ arts顧問(陶磁器・現代アートギャラリー)。

[ケンプラッツ2012年9月26日掲載]