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浅田選手に学ぶ 迷った時は「困難な方」を選べ ~ママ世代公募校長奮闘記(21) 山口照美

2014/2/28

 土曜日の夜あたりから、プレッシャーを感じ始める。月曜日の朝は、校庭で児童朝会があり、「校長先生のお話」をしなければならない。もともと、塾講師だったので子ども相手に話すのも好きだし、ネタはいくらでもある。しかし、1年生から6年生までに聞かせるとなると、話は別だ。子ども達の集中力は、3分ほどしか持たない。

 校長先生向けの講話集が販売されているので、手にとってみた。じんわり、おだやかに、季節を味わう話や、含蓄のある話が多い。時事ネタを取り上げたものもある。

 悩んだあげく、基本的な型を作ることにした。そもそも、「校長先生のお話」はなんのためにするのか。私は、「どんな大人になってほしいか」の種まきの場だと考える。目的を決めた上で、効果的な伝え方を模索する。

■「褒めの瞬発力」で子どもを育てる

朝会でこのボードを掲げ、視覚的に引きつけてから話す。児童がよく通る踊り場に2週間ほど掲示し、定着を図る。まだまだ改善点は多い

 「学校生活で身につけてほしいこと」を「しきつ★チャレンジ」として示し、そのチャレンジにまつわる話をすることにした。

 「目と耳と心を向けて話を聞こう」「みんなの時間を大切にする」「集中スイッチを入れる」……学校をウロウロして、これは課題だと思うことを一言にしぼり、ボードで掲げる。朝会で話をし、ボードを掲示しておく。聴覚と視覚で、守ってほしいことを訴える。少し時間が経った時に、児童向けの校長通信「しきつ★チャレンジ新聞」で穴埋め問題を出し、今までの「しきつ★チャレンジ」を確認する。

 子どもに限らず、ルールを定着させるには「短いフレーズで、くりかえし、聴覚と視覚に訴える」ことが大事だ。塾講師を退職したあと、広告や広報の仕事も経験したことで「メッセージで人を動かす」ことを実地で学んだ。ただし、購買活動を誘うのとは根本的な動機付けが違うのが、難しい点だ。

 「早く教室に戻って学習準備をする」ことは、子どもにとって「得だ」という実感がすぐに得られない。少しでも、のんびりと過ごしたいというのが子どもの本音だ。

 大人になれば、わかる。社会人になった時に、他人を待たせないことは信用につながる。取りかかりが早ければ、密度の濃い学習ができる。その分、力がつく。早く終われば、遊ぶ時間も増える。……大人の理屈は、子どもにはなかなか実感として伝わらない。

 「なぜそのルールがあるのか」を根気強く説明しながらも、できた瞬間に褒めることで、「いい行動をする=褒められてうれしい」を体感させて定着させていくしかない。塾時代から「褒めの瞬発力、叱りの洞察力」を大事にしていた。褒める場面を見つけたら、すぐにハッキリと褒める。「ステキやね!」「ええやん!」「すごいなぁ!」

 小学校の現場に来て、塾以上にこれらの言葉が飛び交って子どもたちを励ましていることに、感激した。勉強以外で、褒められる場面がたくさんある。反対に叱る時は、いたずらをしてしまった子どもの行動の奥にある心理や状況を、聞き取るなり、想像するなりしなければならない。職員室の立ち話は、複数の視点で子どもの行動を分析するミーティングになっていることが多い。

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