薬剤師が医療を変える 薬局経営へ転身の外科医

医師は、引退まで診療・研究に従事するのが一般的。しかし最近、臨床を離れて医療コンサルタントに転身したり、起業したりする医師が目立つようになってきた。社会的使命を見いだし、医師という専門性を生かして臨床・研究現場以外で活躍している医師を紹介する。

薬局の薬剤師に接して感じた、大きな疑問

写真1 ファルメディコ代表取締役、狭間研至(はざま・けんじ)。薬局経営者。1995 年阪大卒。同大第一外科に入局。大阪府立病院(現大阪府立急性期総合医療センター)、宝塚市立病院を経て、2004 年から現職

大阪府で薬局を経営する薬剤師の子として生まれ、現在、実家の薬局の代表取締役として辣腕をふるう狭間研至(はざま・けんじ、写真1)は、もともと阪大の第一外科でメスを握る外科医だった。「母からは『薬剤師になるな』と言われて医学部に進学したし、当初は薬局を継ぐつもりはなかった」と話す。

大学院に進学した翌年の01年のこと。母親から「うちの薬剤師が『肺が真っ白ってどういう状況か分からない』というのだけれど、説明してくれないか」と頼まれたことが狭間の人生の転機となった。

軽い気持ちで医局にあったX線写真を持参し、薬剤師に説明。ところが、反応が芳しくない。よく話を聞いてみると、血液の循環なども分かっていない。解剖学を理解していなかった。

当時、阪大病院は全面院外処方に切り替えたばかり。狭間は「手術してくれた先生が『阪大で処方された以外の薬は絶対に口に入れてはいけない』と言うのだが」と患者から相談を受けた際、「薬剤師さんはちゃんと勉強しているから、安心してかかりなさい」と答えていた。だが、「実家の薬剤師と話をしていて、本当に任せて大丈夫か怖くなった」と狭間は言う。院外調剤である以上、実家の薬局に阪大の処方箋が持ち込まれる可能性も否定できなかった。

狭間は親に、「医師の専門医試験のような生涯学習を薬剤師に受講させるべき」と伝えたものの、当時薬剤師向けのこうした制度はなかった。

そこで月2回、疾患の基礎に関する勉強会を開催。「ところが、勉強会に対して現場の薬剤師からは大ブーイング。『残業代つきますか』とも言われたほど」と狭間は苦笑する。

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