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薬剤師が医療を変える 薬局経営へ転身の外科医

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NIKKEI STYLE

 医師は、引退まで診療・研究に従事するのが一般的。しかし最近、臨床を離れて医療コンサルタントに転身したり、起業したりする医師が目立つようになってきた。社会的使命を見いだし、医師という専門性を生かして臨床・研究現場以外で活躍している医師を紹介する。

薬局の薬剤師に接して感じた、大きな疑問

大阪府で薬局を経営する薬剤師の子として生まれ、現在、実家の薬局の代表取締役として辣腕をふるう狭間研至(はざま・けんじ、写真1)は、もともと阪大の第一外科でメスを握る外科医だった。「母からは『薬剤師になるな』と言われて医学部に進学したし、当初は薬局を継ぐつもりはなかった」と話す。

大学院に進学した翌年の01年のこと。母親から「うちの薬剤師が『肺が真っ白ってどういう状況か分からない』というのだけれど、説明してくれないか」と頼まれたことが狭間の人生の転機となった。

軽い気持ちで医局にあったX線写真を持参し、薬剤師に説明。ところが、反応が芳しくない。よく話を聞いてみると、血液の循環なども分かっていない。解剖学を理解していなかった。

当時、阪大病院は全面院外処方に切り替えたばかり。狭間は「手術してくれた先生が『阪大で処方された以外の薬は絶対に口に入れてはいけない』と言うのだが」と患者から相談を受けた際、「薬剤師さんはちゃんと勉強しているから、安心してかかりなさい」と答えていた。だが、「実家の薬剤師と話をしていて、本当に任せて大丈夫か怖くなった」と狭間は言う。院外調剤である以上、実家の薬局に阪大の処方箋が持ち込まれる可能性も否定できなかった。

狭間は親に、「医師の専門医試験のような生涯学習を薬剤師に受講させるべき」と伝えたものの、当時薬剤師向けのこうした制度はなかった。

そこで月2回、疾患の基礎に関する勉強会を開催。「ところが、勉強会に対して現場の薬剤師からは大ブーイング。『残業代つきますか』とも言われたほど」と狭間は苦笑する。

大手チェーンの台頭で、薬局経営の限界に直面

さらに、狭間を悩ませる他の事件が発生した。ある薬剤師が「アジスロマイシン2日分」という処方に対して、「3日以上処方する必要がある」と疑義照会したところ、その処方箋発行元の診療所の医師が「患者や職員の前で恥をかかせるのか。分業をやめるぞ」と激怒したのだ。

薬剤師の対応は正しくても、門前薬局にとって応需元の診療所は生命線。狭間と薬剤師は頭を下げるしかなかった。薬剤師には「食べるためには仕方がない」と諭したものの、「患者以外のことを優先させることがあってはいけない」という医師が守るべき倫理を守れなかった自分にじくじたる思いを抱いた。

さらに、事業展開の限界も見えてきた。小規模な薬局が、体力のある大手チェーンと同じモデルで、新規出店の場所や薬剤師の確保を競うのは現実的ではなくなっていた。従来型の門前薬局を前提に事業を進めていくのは手詰まりとなっていた。

訪問調剤に活路を見いだし、外科医ではなく薬局経営へ

そんなある日、狭間は特別養護老人ホームから、薬の整理について相談を受けた。薬局から薬が届けられるだけで、何の薬かも分からなくなっていたのだ。そこに狭間は薬局の差別化のヒントを見つけた。

薬剤師自身が患者宅や施設に出向けば薬局の立地は問題なくなる。また、こうしたことに取り組む薬局はまだ少なく、魅力に感じる薬剤師が集まることも期待できる。

大学院卒業を目前に控えた04年、医師として全うするか、実家の薬局経営に本格的に関与するか、狭間は自分の進路を決めかねていた。内視鏡の症例を多く経験しており、大学でも勝ち残っていける可能性はあった。だが、「薬局のあり方が変われば、日本の医療が変わるのではないか」とも感じていた。気がつくと薬局経営の方に強い魅力を感じていた。教授の慰留を振り切り、母親に代わって2代目社長となる道を選ぶ。

「薬剤師が変われば地域医療は変わる」と、外科医から薬局経営者に転身。背景には、「薬剤師の質を上げることで日本の医療を変えたい」という強い思いがあった。

改革を断行、大量の退職者を出す

創業30周年の06年、社員を前に「門前薬局のモデルから離脱する」と宣言。在宅を中心とした事業モデルへの移行を示した。ところが、これが社員の薬剤師から総スカンを食い、大量の退職者を出すことになる。

だが、狭間は引かなかった。「医行為の一部」として薬剤師が回避してきたバイタルサイン(心拍、血圧、呼吸、意識など生命の状態を判断する指標)のチェックを開始。自社の薬剤師に血圧などの測定、聴診の方法などの指導を始めた。「薬剤師が患者に触れるのを禁止する法的根拠はない。『気管支が広がる薬だ』と調剤するなら、薬剤師には効いたかどうかを確認する責務があるはず」と狭間は主張する(写真2)。

この策は的中する。薬剤師が、「『患者が待っている』『地域医療を支えている』という実感を抱くようになった」と狭間は振り返る。さらに、「他の薬局と違う業務ができる」と噂になり薬剤師も集まり始めた。

狭間はそこで止まらない。09年には在宅療養支援薬局研究会(現・日本在宅薬学会)を立ち上げ、社内で行ってきたバイタルサインの講習を広く公開した。ハザマ薬局の限られた店舗だけで教育しても、日本の薬剤師全体は変わらない。だが研修を外部にも公開すれば、地域全体の薬剤師の質向上も期待できる。

「外科医からの進路変更を後悔していないか」という質問に対して狭間は、「表現系が変わっただけで、『良い医療を提供したい』という思いはぶれていない」ときっぱり。「業界で名前が売れてくると、そこから外れるのは勇気がいる。だが、その専門性は医師になろうとした時、あるいは医学生時代に目指そうと思っていたものなのか、考えてみてほしい」

(日経メディカル 山崎大作、豊川琢)

[日経メディカル2013年7月号の記事を基に再構成]

ハグレ医者~臨床だけがキャリアじゃない! ~

著者:メディファーム株式会社
出版:日経BP社
価格:2,100円(税込み)

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