出産直後から妻が話すのは復帰の話ばかり。「束の間の幸せ」を覚悟

その頃を振り返るとき、吉岡さんは笑顔になった。

「いやー、毎日が楽しかったですね。家に帰ったら、妻と娘が出迎えてくれて、しかもおいしい食事が用意されているんですよ。ネットなどでレシピを検索して、バラエティに富んだ料理を一生懸命作ってくれました。もちろん、家にいるとはいえ育児はとても重労働ですから、彼女の負担を減らすために後片付けを手伝ったり、休日は料理を担当するなどして、うまくやっていました。…でもね、妻が話すことと言えば、復帰の話ばかり。出産直後からこの状態でしたから、今のこの幸せは束の間なんだと、覚悟していました(苦笑)」

妻の職場復帰を前に、吉岡さんは、「家事のルールを決めよう」と切り出した。食事や掃除、洗濯、お迎えなど、やるべきことを細かくリストアップして、担当する家事がほぼ半々になるように取り決め、紙にも書き出した。そのうえで妻の職場からも、自分の職場からも30分で行ける場所を探し当て、なんと引っ越しも実行した。少しでも体力面での負担を減らすためだ。

このように、何度も二人で話し合い、子どものためにも家事をうまく回そうと決意して、復帰に臨んだ。はずだった。

――妻の職場復帰から、まる3年経った今。気づけば、吉岡さんがすべての家事を担当している。あんなに細かく役割分担したはずなのに、妻の今の役割は「娘のお迎え」だけだ。

「復帰後の妻は、ブランクを埋めるかのように、これまで以上に仕事に精力的に取り組むようになりました。『役割をこなせていないじゃないか』と文句を言うと、『私だって忙しいのよ。もうちょっとやってくれてもいいんじゃない?』と。復帰当初は毎日がケンカでしたね。…でもね、そのうち悟ったんです。料理も洗濯も掃除も、私がやったほうが圧倒的に早いし、しかもうまいし、適性だってある(笑)。ケンカして家庭の雰囲気が悪くなるぐらいなら、私が腹を括ってやっちゃったほうが、すべてが丸く収まるなって」

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