気にならない妻、キチンとしてないと気が済まない夫

「彼女、家事をしないんです。私が研究発表で忙しい時期にも、ほとんどやってくれませんでした。結婚して分かったことですが、彼女は洗濯物や洗い物が溜まっていても、家が少々散らかっていても、全く苦にならないタイプ。一方の私は、何事にもキチンとしていないと気が済まない几帳面タイプ。家事についてはやれる方がやればいいというスタンスではありましたが、ここまで私がやることになるとは想定していませんでした(笑)。私が忙しい時は食器洗浄機や洗濯乾燥機など、最先端家電にかなり助けられましたね」

そんな生活が4年ほど続いたある日のこと、急に妻が「そろそろ子どもが欲しい」と言い出した。それを聞いた吉岡さんは「かなり驚いた」と言う。

毎日イキイキと、遅くまで働いている妻の姿を見続けていた。広報のプロとして着実にキャリアを積み、「ビジネスウーマンとして脂が乗っている時期」だと感じていた。そんなときに、「出産で仕事を休む」という選択をするとは思ってもいなかったのだ。それに、吉岡さん自身、子どもの必要性をそこまで感じておらず、「まだ先でいい」と思っていた。

しかし妻は、「そろそろ産まないと不安だ」と一歩も譲らなかった。まだ32歳だったが、激務が続き体も酷使していたので、「子どもを産むならゆっくりしていられない」という思いがあったようだ。

ただ、彼女の決意を聞き、吉岡さんの頭に真っ先に浮かんだのは、「子どもが生まれたら、ますます家事をしなくなるだろうな…」だった。

「もう少しやってくれないと子どもは育てられない」夫の宣言

「その頃、私は技術開発部から、技術営業部に移動したばかりでした。妻の活躍を毎日耳にするうちに、『研究ばかりに没頭していてはますます視野が狭くなり、世の中からずれてしまう。もっと事業そのものを体感できる営業の仕事に就きたい』と思うようになり、自ら異動願いを出しました。新しい仕事はやりがいのあるものでしたが、仕事の内容が180度変わっただけでなく、職場も都心にある本社勤務に変わり、『満員電車に揺られて1時間通勤』となったんです。顧客企業とのお付き合いの飲み会に駆り出されることも増え、体力的な負担を感じていました。そんな中での妻の発言だったので、『家事についてきちんと話し合っておかなければ、大変なことになるぞ…』と焦りましたね」

妻には「僕も前ほど家事を満足にこなせない。もう少し家事を引き受けてもらわないと、とても子どもは育てられないと思う」と素直な気持ちを伝えた。それでも、彼女の決意は揺るがなかった。「産休、育休に入ったら、家事はできるだけ妻が行う。もちろん、帰宅後や休日にはできるだけ手伝う」ということで合意した。幸いなことにすぐに子どもを授かり、4年前、女児が誕生。妻は1年間の育休を取得した。

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出産直後から妻が話すのは復帰の話ばかり。「束の間の